2009年10月 巻頭言

                                                          御津医師会会長 菅波 茂
9月9日に開催された岡山済生会総合病院開放病床運営委員会後の懇親会閉会にあたっての平松信副院長の挨拶が印象的だった。「無くなって大切だとわかるものは、親と健康と紹介医」の一句である。紹介医への核心を突いた本当にうれしいメッセージである。あらためて感謝をしたい。
紹介医とは開業医である。開業医と勤務医はどこが違うのか。同じ医学教育を受け、同じ医師ライセンスのもとに地域住民の「命の普遍性」を守るために日夜がんばっている。開業医と勤務医は車の両輪として、いずれもが不可欠である。良きパートナーとしての宿命にある。似て非なる点はただ1点。それは開業医には常に倒産という影がつきまとっていることである。倒産とは一家が路頭に迷うことである。診療所開設の借金をして初めて倒産の恐怖に襲われる。
日本医師会は自らを学術団体と称している。一面の真理である。しかし、医師会のギルド的側面を隠せば偽称である。ギルド的側面とは、保険点数を上げたり、行政から補助金を引っ張り出したりする外部からの利益誘導だけではない。不可欠なことは、ギルドの構成員の生存保障である。開業医の生存保障とは病気や事故などのやむをえない休院を一定期間の保障することである。
開業医の一時的休業は所属する大学の医局によって保障されてきた。医局による保障は今や過去の栄華である。では、誰が開業医の一時的休業を保障できるのか。基本的には地区医師会しかない。地区医師会だけで保障し切れるのか。おそらく不可能である。その自助努力に加えて、更なる外部と連携した相互扶助システムの構築が最良である。
御津医師会は「医療現場を守る相互扶助プログラム」の一環として、御津医師会会員相互の「有事医師派遣制度」を創設した。3週間の生存保障プログラムである。これに国立病院機構岡山医療センター青山興司院長から公式な支援表明をいただいた。有り難いことである。本当に感謝しかない。
平松信副院長の「無くなって大切とわかるものは親と健康と紹介医」の一句が岡山市内の総合病院と各地区医師会との貴重な相互扶助システムへと発展することを期待したい。

投稿日時: 2009-09-30 15:56:51 (1450 ヒット)


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