2008年10月 巻頭言

御津医師会会長 菅波 茂

世の中には似て非なるものがある。一例が市民運動と住民運動である。市民運動は理念に基づいた社会運動である。住民運動は生活に基づいた社会運動である。持続性があるのは住民運動である。何故なら、生活から逃げることができないからである。市民運動は理念の是非により離合集散がある。

御津医師会「医療現場を守る」相互扶助プログラムは住民運動と位置付けることができる。何故なら、「医療」は住民の生活にとって不可欠であり、「医療現場」はその実践の場であるから。医師が自覚しなければならないことは、住民にとって医療は生活の一部分であって全てではない事実である。医療の専門家が生活の専門家ではないことである。地域住民の生活は複合業種で成り立っている。

では、御津医師会「医療現場を守る」相互扶助プログラムの連携すべきパートナーは地域社会では誰なのか。結論は町内会である。地域社会は町内会だけでなく、婦人会、子供会、老人クラブ、愛育委員会等々の各種の団体によって支えられている。にもかかわらず、何故に町内会なのか。それは正統性の問題でもある。正統性は選挙にある。地域社会支える各種団体の中で、町内会だけが地域社会の住民から選挙で選ばれる唯一の団体である。従って、各種団体の会合の時には町内会関係者が上座に座るのが慣例である。住民運動に於いて医療専門家が町内会関係者より上座に座った時点から住民運動からはずされることになる。医療専門家は住民から選挙で選ばれていないから。共同体には掟があることを知るのが住民運動参加への成功の鍵である。

御津医師会「医療現場を守る」相互扶助プログラムを住民運動として位置付けるなら、町内会との協力関係を第一義とすべしである。地域医療の原点は町内会にありとは言い過ぎだろうか。

投稿日時: 2008-10-27 20:31:02 (1283 ヒット)


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