2013年10月 巻頭言
御津医師会理事 黒住陽一
ようやく、厳しい暑さも峠をこして少しずつ秋の気配を感ずるようになりました。 会員の方々には、いかがお過ごしでしょうか。
私はここ十年、母校である中山中学校に、週三回少年剣道団の指導に行っています。実際は、指導というより子どもたちと一緒に稽古している、と言う方が正しいのかもしれませんが。
私は、中学から大学まで剣道部に所属いたしておりました。ただ、学生時代はどちらかと言うと、稽古はあまり好きではありませんでした。というのも、やはり学生剣道ですから試合の勝ち負けが先に立ち、どうやって相手に勝つかが一番の主題であったからです。
ところが、子供たちと一緒に稽古指導していますと、少しずつではあるものの、子供たちの進歩成長を感じることができ、見守る側としてもなにかしら幸福感、達成感を得ることができるようになりました。
本当に色々な子どもがいます。しんどくなると手を抜いたり、列の後ろ後ろに回って体力温存する子もいれば、こちらが心配になるほど、息を弾ませてかかってくる子もいます。才能のある子もそうでない子も、力に任せてかかってくる子も、騙しの手を使ってくる子もいます。ただ、皆剣道が好きでほとんど休まずやって来ます。可愛いものです。
私も、開業して十五年になりました。開業する前は、外科医として毎日手術に携わっておりました。勤務医最後の数年は、若い先生の指導も任されていました。外科医というのは、技術職ですから、上下関係が明瞭です。また、腕自慢の先生も多く、自分の技術を上げることが第一と考える先生も多かったように思います。その中にあって、私も、はたして本当に正しくその先生にあった指導ができたのか、自己犠牲的にできたのか・・。子どもたちを教えてみて初めて想いが至り、今になって赤面する次第です。
現在は、開業医ですので若手医師への指導をすることはありません。しかし、日々診療している患者さんに対して、その人に合った説明指導ができているか、改めて考えさせられます。お会いする方々は本当にさまざまです。年齢,知性、家庭環境、人生死に対する考え方、年収、家族が仲良いかどうかなど、あげれば限りがありません。いかに正しく指導するか、というより、いかにその人に合うよい指導ができるか。ということを常に心掛けるように努力しなければと自戒しております。 病気を得る過程もさまざまなら、それを克服する過程もさまざまであろうと思います。その方なりの方法を指導できるようになりたいと思います。
開業医は,自分自身が指導を受ける機会がほとんどなくなります。その私を時に励まし、時に困らせながら、小さな気付きへと導いてくれているのが、少年剣士たちだ、と言えそうです。
投稿日時: 2013-10-01 12:44:00 (908 ヒット)