2013年5月 巻頭言
御津医師会 清藤哲司
御津医師会の諸先生方におかれましては、ますます御清祥のことと存じます。
昨年12月の総選挙の結果自民党が政権に復帰し、デフレ脱却に向けた金融政策の転換を示すなどして、日本経済に明るい兆しがみえる今日この頃です。
その自民党が先日、教育再生実行本部において、「グローバル人材育成のための世界最高水準の学力の実現」を前面に掲げた提言案をまとめました。英語教育の抜本改革がそのひとつの柱となっており、TOEFLの成績を大学の受験資格および卒業要件にするなどといった提案がなされていますが、これに対して党内でもかなり異論がでているとのことです。
英語教育に関する論争は久しく行われています(平泉渉、渡部昇一「英語教育大論争」、文春文庫、1995年)。役に立つ英語を、コミュニケーション能力を身につけましょうといいます。それはたしかに社会生活において必要なことでしょう。しかし、すぐ役に立つことは、長い目でみれば大して役に立ちません。学力を向上させるべき小学校高学年で、限りある授業時間をあいさつの練習に費やすとは、なんと大きな損失でしょう。内容的には就学以前のレベルにすぎません。
学校教育における英語とは、必ずしも実用を目的とするものではなく、読解を通じて「日本語と格闘する」(前掲書、渡部氏)という、頭脳の鍛錬に意義があると考えます。
4月22日の参議院予算委員会で、国際人とはなにかとの議論がなされました(質問者:山東昭子議員)。「真の国際人とは真の日本人でなければならない。日本の伝統文化を教える必要がある。」(下村文科大臣)
「きちんとした人間であればよい。だれでも英語を話す国に行けばしゃべれるようになるのである。それは習慣であって能力とは関係ない。」(麻生財務大臣)
日本人としての誇りをもてるようにするには、歴史や古典を学ぶことがなにより重要であると考えます。明治維新を実現し、明治政府をつくった人物は、高度な漢籍の素養をもった人たちでした。
私は理数系がまったく苦手で、学力テストではもっぱら英語と国語で得点を稼いでいました。私の勉強法はひたすら読むことでした。乱読というやつです。その中で、安岡正篤先生の講演録を読んだのをきっかけに、論語や孟子などの古典、仏教関係の書物を渉猟したことは、血肉となっているかどうかはわかりませんが、折りに触れて心の支えとなったり、世の中の動きをみる際に参考になったりしています。
教養を身につけ、英語圏のみならず、諸外国に日本の良さを発信する人材が多数輩出されることを願っています。
末筆となりましたが、先生方のますますの御活躍をお祈り申し上げます
投稿日時: 2013-05-01 13:39:57 (1021 ヒット)