2008年8月 巻頭言
御津医師会会長 菅波 茂
21世紀は災害の世紀と言われている。立て続けに地震が発生している。先般に開催された日本プライマリケアー学会「災害医療のプライマリケアー」のシンポジストとして参加された上村先生からいただいた「中越地震における医師会の報告書」を熟読した。阪神大震災の時の経験と比較した。ポイントは次の3点である。1)行政の動き、2)支援チームは何時来るのか、3)地区医師会は何をしたのか。
阪神大震災の時の経験とほぼ同じだった。1)行政の動きは2点ある。一つは最初の3日間は混乱期の情報収集期で具体的な指示は地区医師会には来ない。二つの水や電気の社会インフラの回復は1週間前後である。2)支援チームは何時来るのか。地震発生3−4日からが圧倒的である。3)地区医師会は何をしたのか。4日目からの避難所巡回診療である。
結論を言えば、地震発生3日間は混乱期で体系的な被災者救援医療は困難である。「地区医師会は独自に動くべし」である。地区医師会の会員は地震発生当日から、最寄の、地域住民の集まる小学校の避難所に駆けつけるが最良である。顔なじみのかかりつけ医の顔は不安におびえる地域住民に安心を与え、的確な治療ができる。3−4日目からは避難所には日赤の医療チームが救護所を設置して支援体制に入るし、ボランティア医療チームも続々と参加してくる。彼らと協力体制を組むことが最良である。1週間目には自分の診療所に帰って保険診療体制を推進することが望ましい。
地区医師会で会員による小学校避難所の複数担当医を決め、3日間の食料と1週間の医薬品と診察・治療機器を事前に備蓄しておくべきである。小学校と連合町内会との協力体制は不可欠である。残念ながら、行政による地域防災計画には、小学校避難所レベルにおける防災体制は明確になっていない。
御津医師会による地区医師会防災モデルを策定・推進してはいかがであろうか。
投稿日時: 2008-08-27 20:28:32 (1296 ヒット)