2026年9月 巻頭言
巻頭言
急性期医療はどこへ向かうのか〜新たな地域医療構想と現場の戸惑い〜
御津医師会理事 柴山卓夫
連日の酷暑により、体調管理の難しい日々が続いています。今年は最高気温40℃以上を示す「酷暑日」という言葉が新たに登場しました。近年の異常な暑さを考えると、従来の「猛暑日」だけでは危険性を十分に表現できなくなっているのかもしれません。会員の皆様におかれましても、どうぞご自愛いただきたいと思います。
さて、本年7月、「地域医療構想策定ガイドライン」が公表され、2040年を見据えた新たな地域医療構想の議論が本格的に始まりました。今後さらに高齢化が進む中で、高齢者救急を含む地域急性期医療の需要は増加し、その機能を担う医療機関の重要性は一層高まるとされています。
一方で、現実の地域医療を見渡すと、県内の多くの医療圏で救急医療の中核を担っているのは基幹病院です。今後、これらの病院には急性期拠点病院として高度専門医療、救急医療、災害医療や新興感染症対応を担うことが求められるとともに、高齢者救急を中心とした地域急性期機能も期待されることになります。しかし、限られた人的・物的資源のなかで、高度専門医療への機能集約と地域急性期医療の充実を同時に実現することは決して容易ではありません。
機能分化と効率化は、人口減少社会における医療提供体制の維持に欠かせない考え方です。しかしその結果として、救急搬送後に病院機能との適合性を理由に下り搬送や早期転院が繰り返されるような医療が、患者や家族にとって本当に望ましい姿なのかという疑問も残ります。
かかりつけ医が地域と在宅医療を支え、急性期拠点病院が高度専門医療を担い、包括期・慢性期病院が受け皿となる。その連携がこれまで以上に重要になることは間違いありません。しかし現場で患者と向き合う立場としては、「患者ファースト」と「効率的な医療提供体制」が本当に両立できるのかという一抹の不安を拭うことができません。医療政策が描く理想と現場の実情との間には、なお埋めるべき距離が残されているように感じます。
高度経済成長期に築かれた社会システムが転換点を迎えるなか、私たちは避けられない変化と向き合わなければなりません。痛みを伴いながらも、地域ごとの実情に応じた、まさに“just fit”な医療提供体制へと収束していくことを期待したいと思います。
酷暑のなかで地域医療構想策定ガイドラインを読み返しながら、そんなことを考えました。もっとも、その一部は暑さゆえの杞憂かもしれません。秋風が吹く頃には、急性期医療の未来に対して、もう少し明るい展望が見えていることを願っています。
投稿日時: 2026-09-07 21:28:17 (7 ヒット)








