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2023年 4月 巻頭言

巻頭言


御津医師会 副会長  山下 浩一

 

 子宮頸癌がHPVウイルスの感染症だという論文が発表されたのは1983年でした。当時抄読会で発表した記憶が有ります。「ホンマカイナ」と思いましたが、その後間違い無いと実証され、2008年にはノーベル賞を授けています。
 HPVは200種以上に分類されますが、最も発癌しやすい群を15種、次群を25種挙げていました。ワクチン接種による子宮頸癌予防の取り組みは2010年頃から世界中で始まりました。日本でも2013年からワクチン接種を開始したのですが、3か月位で勧奨しないと厚生省が発表した影響で、日本人のワクチン接種率は3.3%くらいしかありません。英国では85%位の接種率が有り、統計的には12〜13歳(Sexなしか)で接種すると子宮頸癌発生率を87%下げ、16〜18歳(Sex有りか)で接種すると34%減少します。この様な統計的データから、令和3年11月末にHPVワクチンを再び勧奨する事になりました。令和4年4月より接種機会を失った平成9年〜17年生まれの女性に無料接種が可能になりました。12歳(小6)〜16歳(高1)は以前から無料で接種出来ます。
 子宮頸癌は若年発生の癌です。現在20代から30代が発生のピークで、それ以上では低下します。(1980年代は、30代と50代にピークが在りました。)20代から30代の進行癌の約60%をHPV16が、約20%をHPV18が起こし、この2種で83%を占めます。この2種がワクチンに採用されました。その後、HPV6とHPV11を加えた4価ワクチンが出来ました。後の2種は癌ではなく、尖圭コンジロームの原因になります。尖圭コンジロームは再発し易く、根治まで時間のかかる病気ですので、同時に予防出来ると有難いと思います。
 令和5年4月から9価ワクチンが公費ワクチンに追加されました。HPV6、11、16、18にHPV31、33、45、52、56を追加したものです。追加5種はCIN1-2-3(前癌病変)の44〜45%の原因で、進行癌では9〜11%の原因になっています。HPV16、18のウイルス量も4価ワクチンより多くなっていますので、より予防効果が高くなると期待されています。(長期の発生率変化はまだ論文が有りません。)
 平成9年〜17年度の方の無料接種は3年間の時限立法です。すでに1年が経過し、残り2年です。対象となる年代の方にはワクチン接種を是非お勧め下さい。
 

投稿日時: 2023-04-24 14:22:58 (203 ヒット)

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