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2023年 3月 巻頭言

巻頭言


新型コロナウイルス感染症が5月8日に2類相当から5類へ引き下げへ

 

御津医師会副会長  中村 毅

 

 「新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけについて、政府は5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行する方向で検討を進めている。」とのこと。
 5類になるとどのようになるか考えてみたい。
まず、当院での発熱外来の体制を紹介したい。発熱のある患者は電話で受診の予約を行い、当院に到着時に改めて現着の連絡をいれる。そのまま車で待っていてもらい、私が車に行き、抗原検査を行う。抗原検査の結果が陽性の場合、療養期間の説明、処方内容の相談などを電話で行う。会計の計算が出来次第、スタッフが電話を行う。必要な場合は釣銭を準備した上で私が車に行き、会計を行いながら、岡山市から依頼されているプリントを渡す。最後に薬局が薬を車に持参し患者は帰宅し、療養することになる。抗原が陰性の場合は、診察希望者は診察を行い、PCR検査を希望の場合は追加でPCR検査を行う。このように何回も電話でやり取りを行い、また感染対策の観点からスタッフが患者と対面しないように患者と対面することは全て私が行っている。
 コロナ禍前から当院では発熱の患者には別室で待機してもらっていた。もし、5類になるとコロナ禍前と同様になり、上記のようなドライブスルー的な診察は行わなくて済むようになる。これは、かなりの肉体的、時間的負担の軽減になる。つまり、診療体制としては、5類変更は歓迎することである。
しかし、投薬費や入院代は2類相当の現在は公費払いで済んでいるが、5類になると公費ではなくなる。患者負担が発生するのである。2月18日の山陽新聞によると、コロナウイルス感染症の医療費のうち、検査や解熱剤については自己負担を求める方向で検討しているとのこと。ここにパキロビッド®パックやラゲブリオ®等にコロナウイルス感染症に対する治療薬の負担は記載されていない。これらの薬は高額である。高額な患者負担が発生することは、受診控えや重症化している状態でやっと来院する方が増えることが考えられる。また、受診控えは“隠れ”コロナを増やし、こういった方々が他の方にコロナウイルス感染症を感染させてしまうかもしれない。しかし、5類になると、発生数の届義務もなくなるので、誰も発生している人数を把握することが出来なくなる上、連日〇〇人という報道もなくなる。つまり、市民がコロナウイルス感染症が現在流行っているか、流行っていないかを把握することすらできなくなる。こうすることで国民が“withコロナ“の生活を送ることを政府は考えているのかもしれない。
 それでも良いのかもしれない。ただ、65歳以上のコロナウイルス感染症の死亡者数はインフルエンザのそれと比較してもまだまだ多い。この点を解決していない現在、医療に関してそこまで手綱を緩めて良いのだろうか?公費負担で療養できること、薬を貰えること、また防御、感染時の症状軽減と言われているワクチン政策などは今まで通り2類相当の方が良いと考える。
 感染対策の名のもとに様々なイベントが中止、延期を強いられてきた。個人的な旅行なども多くの国民が控えることを強いられてきた。そのような面では5類への移行は歓迎するが、医療に関してはまだ2類相当の方が安全なのではないかと考える。
 

投稿日時: 2023-03-03 19:05:30 (249 ヒット)

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