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2009年09月 巻頭言

                                                      御津医師会会長 菅波 茂

 世界の人たちが日本について知りたい三つの質問がある。ひとつは「何故に平均寿命が世界一なのか」、ふたつは「何故に戦後奇跡的経済復興をなしとげたのか」、最後は「何故に欧米の植民地にならなかったのか」である。当然、平均寿命世界一には光と影がある。私たち医療従事者には、「光についての説明義務」と「影を昇華さす行動責任」がある。

 「光についての説明義務」として「優れた統治システム」、「国民の高い識字能力」、そして「地域ぐるみの健康推進運動」をあげることができる。「優れた統治システム」とは、法治国家日本の国民皆保険、保健所法と母子保健法の制定に基づいた官僚の施行システムである。「国民の高い識字能力」とは江戸時代から続いている教育習慣とシステムである。「地域ぐるみの健康推進運動」とは、相互扶助に基づいた町内会をはじめとする各種地域団体である。加えて、地区医師会である。日本人にとっては空気のように当たり前のことが海外の人たちにとっては教科書である。

 御津医師会が推進する「地域医療を守る」相互扶助プログラムは、新基軸でも何でもない。平均寿命世界一を創り上げた先人たちの哲学である「相互扶助」を今風に活用しているに過ぎない。相互扶助とはギブ&テイクの大人の関係である。助け、助けられる過程で相互理解と相互信頼の人間関係が構築される。この尊敬と信頼の人間関係が生涯の財産となる。隣の開業医の不幸は蜜の味なのか。それとも、隣の開業医はまさかの時の真の友なのか。二者択一である。

 「平均寿命世界一の陰を昇華さす行動責任」とは「情けは人のためならず」である。地区医師会に所属する開業医の平均年齢は60-70歳である。少なくとも20年以内に平均寿命世界一の「陰」の領域に入る可能性がある。即ち、この陰とは介護である。介護とは生活である。開業医は基本的には職住一体である。地域コミュニティで老後を送る可能性があれば、地域の介護力の強化こそ自らの老後の幸せを保障してくれる。開業医は自らの老後の環境整備で一番大切な地域介護のイニシアチブを与えられていることに感謝しなければいけない。

投稿日時: 2009-09-02 10:03:46 (1442 ヒット)

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