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御津医師会副会長 大橋 基 挨拶

菅波会長から病診連携というテーマをいただき、病診連携が円滑に進むようにとこの一年活動してきました。その活動報告と今後の計画をお示しして挨拶に代えさせていただきます。

まず、病診連携を達成するために何故ケアマネとケアマネジメントの研修を行ったのか?から整理してみます。

病院に入院されたあと地域で療養生活を送りたいと望まれる患者さん・ご家族のご希望に応えるためには、退院時から在宅での療養生活を支える体制を整える必要があると考えました。尾道方式と呼ばれる、地域ケアシステムに学び御津医師会地域でも質の高い在宅医療・ケアが行われる様に出来ないかと考えました。きちんとしたケアアセスメントが行われそれに基づくケアカンファランスが行われ、他職種が同じ問題意識で協働でき、医療とケアが一体化して提供されるようになる。これが病診連携の目指すところです。

尾道の片山先生の受け売りですが「ケアマネジメントシステムは“なんらかの生活障害を持つ利用者に一元的なサービスが的確に提供されることによりQOLの向上が実現できるための方法論”と定義されます。

ケアマネジメントそのものは,1930年代に英国の老年科医マージョリー・ウォーレンが提唱した高齢者総合評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)に源流が求められる,高度な学問領域です。

ケアマネジメントにおいて利用者とサービス提供者を結ぶかなめとなるケアマネジャーは,まず何よりも介護保険制度全体の理念の理解を最優先しなければなりません。

ケアマネジメントの実践のためにはその前段として、ケアアセスメントをきちんと行うことが大切です。

アセスメントができないのでは,利用者にサービスの目的などを説明することはできません。さらにアセスメントなしに,長期にわたる利用者のフォローアップはできないのです。また,アセスメントのメリットを言えば,アセスメントもケアマネジメントの理念同様に学問の領域となります。ですから,ケアマネジャーはアセスメントの手法を習得することで,ケアマネジメントの理念も学ぶことができる。つまりアセスメントは教育ツールでもあるわけです。

結果的に地域ケアマネジメントシステムを構築し,良質なケアを利用者に提供していくために,主治医には介護保険制度を新時代の地域医療システム構築の有力なツールとする積極性が、また,ケアマネジャーには学問領域にまで踏み込んだたゆまぬ学習と実践、それに基づいた他の専門職種や利用者からの信頼が必要となります。

残念ながら岡山には考え方もシステムも充分にあるとは言い難い現状です。医師、ケアマネージャーが一緒になって力をつける必要があると考えました。

実際に行ったことは、尾道方式を学ぶために、6月25日に尾道市医師会長片山先生に「尾道方式について」講演をしていただきました。

在宅の患者さんに複数の医師と看護師をはじめ他職種が見事な連携をみせて、 満足度の高い在宅医療・ケアが提供されている様子が示されました。

その後五回の研修会を行いました。一回目は7月30日に医師・ケアマネ・看護士・保健士など他職種の顔あわせで自己紹介をしていただきました。その際にCGAつまり高齢者は診断も大切だが状態を評価(アセスメント)することがもっと大切であることを話しましたが観念的過ぎて伝わらなかったようでした。

そこで二回目は9月25日に万成病院の楢原氏に問題点(ニーズ)の把握の仕方つまり、アセスメントの必要性を話していただきました。問題点(ニーズ)の把握にはCGAの概念に基づいて作成されたアセスメントツールであるMDSを用いてアセスメントを行うと客観的な評価が行えることを示しました。
そして、この地区では先ずMDSを使ってアセスメントを行ってみようと提案しました。

三回目は11月11日にMDS学会の評議委員でもある福山市医師会の徳永先生にMDSを用いてのアセスメントの実際とカンファランスのやり方の実際をみせていただきました。

問題点(ニーズ)の抽出に優れており、誰が行っても根拠のあるプランの作成が可能である点が確認されたと思っています。

また、カンファランスの目的にはいろいろあり、ケアカンファランスはクライアントの 問題解決のために行い、事例検討会は参加者の能力向上を目的に行うものでやり方が異なるとの指摘をいただき、目からうろこの心境でした。
これからは、目的を明確にした研修会を計画したいと思います。

その後は二ヶ月に一回のペースで12月11日・2月26日・4月23日に事例検討によるケアマネジメントの研修を行ないました。

事例検討を行う場合に主治医の出席があると実り多いものになります。各テーブル一名以上の医師の参加をいただき感謝しております。

ただ、あまりに一部のケアマネと事業所の負担が大きかったようで事例提示者の確保が難しくこの形態での事例検討会の継続は検討中です。 今後はあとで述べます連携パスの実践のための研修会を他職種の方に参加いただいて開催していきたいと思っています。

もうひとつの病診連携として、塚本先生のご尽力で国立病院での診療と地域の 開業医との診療に継続性を持たせられるようにクリニカルパスの学習と導入を すすめて、外来患者さんでの連携を深める目的での「糖尿病」講演会が開催されました。今後も継続的に開催予定です。ほかの疾患についても順次拡大の予定です。
新しい動きとしましては東備地区全体を巻き込んでの脳卒中の連携パスの使用が4月から始まります。病院内のチーム(医師・看護師・PT/NST・MSW)が専門的な所見を記入していく内容豊富なパスです。地域で受け取る側にも読み取るための技量が要求されてくると思います。医師のみでは解釈し治療とケアを組上げるのは難しくまさに地域での他職種によるチームプレーが求められていると思います。

介護保険は避けては通れません。カギを握るのはケアマネージャーです。越えるべきハードルは高くて数も多いですが、脳卒中パスの研修会の印象では 在宅での他職種協働を意識したケアマネージャーも数多く存在しています。地域での各職種のマンパワーがどこにどれくらい存在しているのか、どれくらい協力が得られるのか示せるようにしたいと思います。
会員諸氏のご理解とご協力をお願いいたします。

大橋 基

投稿日時: 2009年04月27日 (3028 ヒット)

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