映画エンディングノート上映会 一宮・津高
映画「エンディングノート」(120分) 監督:砂田麻美 上映会・意見交換会
日 時 平成26年9月18日(木)13:30〜16:30
場 所 岡山市立一宮公民館 二階研修室
参加者
地域住民 126名
医師会 大橋、大守、 事務局)岡田、みつネット)成広、連携室)森
ガンの告知を受け「残された家族が困らないように」と終活を行う父の姿を映画監督である娘さんが温かい視線で追ったドキュメンタリー映画。すでに複数回、岡山でも上映された作品だが今回はあえて公民館単位の小地域を対象として広範な広報はせず、地域内のみ密に広報を行った。
上映会の企画の目的は、やがて訪れる「最期の時」や「家族の絆」についてひとりひとりが考える機会を持っていただくこと、小地域で関心を持っていただくよう啓発をしてゆく事。
上映後、希望者のみで意見交換の時間を持ち24名の方が参加し、それぞれの想いを語り共有することができた。結果、地域に暮らす一人一人の力が確認でき、まだ引き出せていない力に触れることが出来た。地域包括ケアなど国の方針についても地域に伝えることが出来れば、小さくても確かな動きが期待できるのではないかと感じた。
概ね全体的に好評を頂き、今後の開催に期待するとの回答が得られた。 アンケート 120配布うちしたうち94回収。
(主な意見)
・日常に流されることなく自分らしく生きたいと思った。
・もう一度ゆっくり見たい。感動しました。素晴らしい映画、生き方に感動。
・人生何があるかわからない早めにエンディングノートを書こうと思った。
・物足りなかった。
・実映像に驚きました。我が家のエンディングについて考えよう。
・家族のあり方を考えたい。
・愛の大切さを知りました。夫を大切にしたいと思いました。
・とてもよかった勉強になりました。
・主人公の精神力の強さに感動しました。
・心にしみました。
日時 平成26年10月5日(日)13:30〜15:30
場所 岡山市立津高公民館 二階研修室
参加
地域住民:100名、
医師会)森脇、 事務局)岡田、みつネット)成広、連携室)森
一宮公民館に続き今回は津高公民館にて小地域の住民を対象として、「エンディングノート」(90分)、監督:砂田麻美の上映会を開催した。
この企画の目的は、やがて訪れる「最期の時」や「家族の絆」についてひとりひとりが考え、次に小地域へと広げてゆくこととして開催した。上映後の茶話会には24名がご参加くださった。 その中で(参加者より)ご主人の看取りについて、「10年ほど前のこと、近医治療中改善がみられず大きな病院を紹介された。毎日点滴に通い、その日も病院で点滴を受けて帰宅したが、急変し息を引き取った。(奥様は)自身の介護の在り方に危機感が無さ過ぎたと今も後悔している。」とのお話しだった。
要因として当時の在宅医と病院の連携の悪さもあったかと思うが、森脇先生より、「医者は常に患者さんの死をみています。その人に悪い病気は無いかということを一番にみています。」とご発言を頂いた。私も含めてこの会場にいた方の多くは、ご自身と家族の最期を悔いの無い時にしたいと考えている方が大半。
医師は患者の命の残り時間を知る機能・役割りを担っている。知り得た情報を、今生きている本人と家族に大切に正確に伝える必要がある。病状が進行し患者や家族が自ら自覚してからでは”豊かに生きる”に残された時間が少なすぎると実感した。
しかし会場からは「先生には助けてもらいたいのに ”死をみるなんて・・”」との声があがった。
医療には健康を向上・維持・守る医療の他に、命の期限と質を保証するための医療がありそれを終末期医療というのだと思う。
人は、その発達段階に合った医療を選択できてこそ、生涯を豊かに暮らすことができるのだと改めて感じたが、同時にまだまだ地域にはその認識が薄いことも確認できた。今回の企画で総論的なイメージは一部の住民にお伝えてきたが、今後はあまり急がず、ゆっくりのペースで地域住民と共に考える場を企画してゆく必要があると思い、その起点として ”故人偲ぶ会” などの企画が有効ではないかと感じた。
アンケートを実施。参加者100名に対し78名回収。全員が「よかった」、「今後も参加したい」、「どちらかと言えば参加したい」と回答。 (主な意見)
・大まかに終着点が分かれば逆算予測をしてこのような人生を歩みたい。
・エンディングノートは必要と感じた。核家族の時代、家族の絆の持ち方に感動。
・理想的な最期は難しい。主人と今後について話をしてみたい。
・できることをやっておくべき。参考にしたいです。
・生きてゆく延長線として死を迎える。自分らしく最期を終わりたい。
・自分も考えるきっかけになった。
・主人と長男を亡くしましたが元気に生きてゆきます。
・また次回、訪問看護と家での看取りについて企画してほしい。など
(連携室)
投稿日時: 2014年11月14日 (839 ヒット)
結城思聞(松倉悦郎)先生講演会
日時 平成26年9月17日(水)18:30〜20:00
場所 国立病院機構岡山医療センター 西館8階 大研修室
主催 御津医師会みつネット 共催:国立病院機構岡山医療センター
参加者
岡山医療センター職員76名、その他多職種スタッフ及び一般住民111名
(御津医)みつネット:大森、駒越、宗盛、
佐藤、津島、塚本、森脇、難波晃、
連携室:森、みつネット:成広、事務局:岡田
演題 「いのち・生命・無量(いのち・いのち・いのち)」
講師 浄土真宗本願寺派善教寺住職 結城思聞 先生
今回は姫路の浄土真宗本願寺派善教寺住職 結城思聞先生に生きることについてのご講演を頂いた。
結城先生は元フジテレビアナウンサーで、その時代の王監督・長嶋監督のエピソードやアグネスチャンと白血病の女の子の話など様々なお話を交えながら、豊かに生きるための心構えを説いて頂いた。
様々な詩や名言、仏教用語などを交えながらお話し頂いたが、中でも金子みすゞさんの「私と小鳥と鈴と」の一節に触れられ、私たちはすぐに「みんな違ってみんないい」というところを思い浮かべがちだが、そこではなく題名に「私と小鳥と鈴と」とあるのに文中では「鈴と小鳥と、それから私」と私を最後にしている部分に注目し、自身を最後に置き、他を敬うことが重要だということをお話し頂いた。
他にも高齢者がよく「役割がなくなったから早くお迎えが来てくれたら・・・」という様な事を言うが、高齢者に限らず誰しもが生きているだけで無限の尊厳であるということ、命の重さはどんな生き物でも平等であるということ、大切なものは目に見えず、漠然としたもので、命とは自身に与えられた大切な時間であると話された。人を理解するには「understand」という単語からもわかるように下に立って理解することが大切という様な事をお話された。
地域包括ケアを構築する為には、地域力を上げていくことが重要で、地域力を上げるためには今回の講演会で先生の説かれた「私とあなた」ではなく「あなたと私」という気持ちを持つことが大切だと感じた。
今回の講演会で勉強したことを活かせるよう謙虚な気持ちで今後の業務を行いたい。
(みつネット)
投稿日時: 2014年10月31日 (1081 ヒット)
津高一宮ネット全体会議
日 時:平成26年9月11日19:30〜21:00
場 所:岡山中央病院セミナー室
参加者
(地域)黒住、伊庭、久世、松倉、吉仲、則安。大森、林、斉藤、大森れ、
(サービス事業所)橋本、小村、宮地、板野、 (栄養士会)森、垣本、
(薬局)大呂、弥園、高木 (訪問診療所)中川、
(病院連携室)黒原・前田・鷹取・大田原・山口・本城谷・菅原
(大学)利根、(行政)市:徳田、山崎、県:高原、(包括)能勢.大山.久安・永易
(医師会)駒越・大橋・森脇・難波晃・難波経、(事務局)岡田、(みつネット)成広、(連携室)森
1 開会
2 自己紹介
3 事項
御津医師会学術シンポジュムに向けて地域の実情を確認する
テーマ:「ときどき入院、ほぼ在宅」 地域で支える
地域における在宅医療・在宅介護に関する意見。
○地域住民:
・家族との同居世帯は少ない。単身世帯の高齢者を在宅で看てくれる家族がいない。
・両親の看取りを経験したが家族だけで看るのは大変、多くは病院で最期の時を迎え
る。
・介護が必要になったら医療・先生・病院の世話になりたい。
・認知症の父親の介護をしている。失禁の介護は特に大変。
・先生や介護の方のお世話になりたい、自身も具合が悪くなったら入院を希望する。
・高齢者介護は入浴・排泄などに大変さを実感している。
・高齢者より日常満足のいく生活が出来ない不安を訴えられても民生委員としては個
別対応をすることはできない。
・高齢者(単身世帯)が転倒骨折。すぐに民生委員→包括支援センター→入院の段取
りができた。町内会に相談が来た場合は包括支援センターに連絡する。
・高齢者や高齢者家族は民生委員に相談してくれるが 特に困難なケースなどは民生
委員会全体会では話し辛くそれぞれ属している小委員会にて相談・対応を検討して
いる。
・家族、親子の関係が希薄になっている。
・新しく転入してきた方の多くが個人情報を出したがらない、支援がしにくい。
・家族は県外在住、帰省はほとんどない。
・医療制度の破たん、国の失敗を国民に投げつけてきた。在宅の入れ物はあっても中
身がない。なんとかしなくてはならない。
・治療優先の医療、生きるではなく、生かされている医療ではないか。
・介護の経験はなく大変さがわからないが、自身の手と口が使える間は生きたい。
・岡山は健康寿命が短い、健康づくりに力を入れてゆきたい。
・元気なうちは自身の健康を守るため地域活動に参加したい。
・横井などは半分都会・半分田舎。マンション住まいの者にとって日頃の声掛けは「お
せっかい」となり得る。「自助の徹底」が有効ではないか。「共助」は、いざと云
う時には機能する。
・「近所の力」「村」を作ろう。
おせっかいでも行動できる「近所」という考え方を浸透させるために「おやじの会」
を立ち上げた。月に数回の飲み会を開催。メンバーは55歳から78歳まで総勢27
名。いろんな職種の方が関わり意見の違いもあるが、互いによい勉強の機会になっ
ている。
・相談のあがった困難なケースの支援について民生委員全体会・小委員会にて相談・対応を検討し支援している。
・要支援台帳の取り扱いについて市に検討してほしい。記載に不備が有ったり守秘義務も課せられ活用ができていない。
その他の質問等
・病院の先生、特に若い先生は患者の目を見ないで診察する。
・待ち時間が数時間に及ぶ。予約の取り方は見直せないだろうか。
・薬の使用期限について。
○医療機関から
・通常30分に3人程度診察予約だが、それでは対応できないため現状6名程度の
予約を受けている。昼食も摂らずに診察しているのが現状。
○薬局薬剤師から
・残薬整理 コスト意識を持つことも大切。
・残薬について医師に相談するとよい。
○医療機関:
・地域の課題はそのまま病院の課題。同じ課題を抱えている。
患者意識として「家族に迷惑を掛けたくない、しかしお金がない、行くところもな
い。」
・急性期病院に搬送されたら治療をトコトンやりつくし、とりあえず命を取りとめる。
・治療のゴール=生活の質ではなく、時に納得のいかない状態に陥ることもある。
・「どう生きたいのか」「どう死にたいのか」意志を伝えておく必要がある。
○包括:
・地域の繋がりが強い地域は健診率が高い。
・包括の知名度アンケート「50パーセントが知っている。」と答えた回答に対して、
こんなに地域に出ているのにあまり知られていない。現実問題として関わりを持ち
つながった支援の他に、つながらない支援もまだまだ有るのだと思う。
○行政:
・介護力強化が今後の地域包括ケアを推進してゆくためのキーワード
・高齢者福祉課 医療政策推進課 介護保険課の3課が合同でその専門性を活かし動
き始めたところ。地域の現状に合わせた政策を検討してゆく。
○医師会:
・地域の現状を知り「いかに人生、全うするか」「いかに幸せな地域にできるか」地
域住民・専門職・行政・医師会が共に考えてゆくべき大きな問題である。次回シン
ポジュムにて検討。
御津医師会地域医療学術シンポジュム:
日 時:10月11日16:00〜18:00
場 所:ロイヤルホテル
参加費:無料
定 員:300名
次回予定 日時/会場 未定
(連携室)
投稿日時: 2014年10月16日 (694 ヒット)
御津医師会在宅医療を推進する会
第2回在宅医療を推進する会
日 時:平成26年6月16日(月)19:30〜21:00
場 所:御津医師会事務局
参加
駒越、塚本、大橋、大守、難波晃、森脇、鳥越、津島、難波経雄、深澤、宗盛、
連携室・森、 事務局・岡田
1.各医療機関の在宅医療の現状について
意見
・在宅をしている医師の集まる、ゆるやかな(長続きのできる)ネットワークを作りたい。
・多職種との連携もいいが、医師会内部の連携はできているのか疑問。もっと充
実すべきである。
・病院との関係作りをするため、勉強会等を行ないたい。
・みつネット・津高一宮ネットという地域連携の場をつくり、それぞれの地域で
活動している。多職種連携の場になっているので、在宅医療をしている先生方
にもっと参加して欲しい。
・退院時ケアカンファレンス等を行ないたい。患者が家に帰ってみたい、家に帰
りたいという希望をかなえるために、いろいろな職種の方ががんばっている事
を患者や家族に見てもらいたい。
・病院の先生から、患者さんを在宅で診て欲しいとのオファーがない。患者さん
が、在宅に帰るということを考えていないのではないか。在宅での診療依頼は、
訪看やケアマネジャーからがほとんどである。
・内科以外の専門科の先生に、気軽に往診してもらえるようにしたい。連携室・
森さんが医師会内の専門の先生の往診の可否を調査をする。
・ポータブルのレントゲンは、あまり使わないものなので購入を迷っている。共
同購入はできないか。
2.今後の在宅医療の進め方について
・携帯や自宅の連絡先情報を登録、困った時に助け合える掲示板みたいなものは
つくれないか。
・今日の会のような気軽に話ができる場を設ける。
3.岡山県在宅医療連携拠点事業における実施事業についての要望・意見
・「見え検」等の勉強会を開催予定。積極的に参加して欲しい。
4.その他
3ヶ月に1回程度この会を開催する。次回は、9月半ばの予定(月曜以外)。
連携室・森さんに、本日の参加者以外の訪問診療をしている先生や専門科の先
生に参加していただけるよう声かけをしてもらう。
第3回在宅医療を推進する会
日時 9月9日(火)19:30〜21:00
場所 御津医師会事務局
参加
駒越、大橋、大守、難波晃、森脇、鳥越、難波経雄、難波経豊、宗盛、
連携室・森、みつネット・成広、事務局・岡田
1 他科の先生との連携について要望等
眼科、耳鼻科、泌尿器科、産婦人科、皮膚科、歯科等
津高・一宮地区を中心に、前回出席していただけなかった先生方を中心に連携室
から直接声かけをしてもらい参加をお願いしていたが、今回の参加者は少なかっ
た。
在宅診療は内科が主となっている。しかし、在宅医をしている立場からは、嚥下
障害等で耳鼻科、尿閉で泌尿器科、褥瘡等で皮膚科、骨折等で整形外科といった
ように、困った時に専門医に診て欲しい思う事がある。そういった際に、気軽に
相談できるような関係を築くことができればと考えている。
まずは、寝たきりの人についても専門医のニーズがあることを、医師会内の他科
の先生方に知ってもらう必要がある。
また、他科の先生方の往診に行きやすい環境を整えるためにも、岡山県医師会を
通して、専門医の往診について検討していただくよう働きかけていく。
またディケアや訪問介護等で、介護職や看護師が、利用者の様子をみて、「これ
は専門の先生に診てもらった方がいい」とか「薬をもらった方がいい」と直接家
族に言うことが多いが、在宅医の方針と違う場合がありトラブルになることもあ
る。まず在宅医に相談する、ということを、介護職等に徹底することが必要。そ
れについての介護職等に向けた勉強会も必要だと思う。
2 在宅医療の勉強会について(案)
・法医学 在宅死
岡山県より、岡大・宮地先生の勉強会の提案。
11月以降の平日夜に、ケアマネ等も含めた会を設定する。
・中央病院 緩和ケア(金重先生)
ケアマネ等も含めた会を、2回に分けて設定。
みつネットで、11月〜1月くらいで、2回、設定予定。
・エーザイ 認知症
医師のみ。3回シリーズで、5〜10名程度での臨床講座。
いずれも、実施とする。
3 御津医師会「地域医療」学術シンポジュム
ときどき入院、ほぼ在宅 〜地域で支える〜
10月11日(土)16:00〜18:00 ロイヤルホテル
地域住民に対して、「在宅医療について、知って欲しい事」等
「在宅」は、介護力の問題である。病院から帰るタイミングについて、病院の先
生方に考えて欲しい。
在宅で診ている患者さんの状態によって、病院と家とを気軽に行き来できるよう
な環境が整えられよう目指したい(短期入院等)。家族が安心して介護を続ける
ためにも必要なことである。
9月11日の津高一宮ネット全体会では、地区住民の方より、介護保険について
のわからない点、聞きたい事を聞く予定にしている。これをもとに、シンポジュ
ムの内容を考える。
4 その他
次回 12月5日(金)19:30〜 御津医師会事務局予定。
在宅医療勉強会にし、医師会内の専門科の先生にレクチャーをお願いしたい。
寝たきりの患者に多い疾患別に、講師をしていただける先生を捜す予定。質問形式
で、事前準備は不要な形とする。
投稿日時: 2014年10月01日 (896 ヒット)
第18回御津医師会糖尿病勉強会
日 時 平成26年7月18日(金) 19:30〜21:00
場 所 岡山医療センター 西病棟8階 研修室4
共 催 武田薬品工業(株)、御津医師会
参 加
(御津)駒越、塚本、大橋、難波晃、森脇、鳥越、清藤、 事務局:岡田
(吉備)井上
【症例提示】
「抗菌薬投与と血行再建により救肢し得た糖尿病性足壊疽の一例」
岡山医療センター 糖尿病代謝内科 森本栄作 先生
左下肢痛を主訴とし、近医より下腿切断を勧められて当院受診した症例。
糖尿病性足壊疽としては神戸分類を用いて評価。Type?と分類した。抹消神経障害と抹消血管障害の有無を評価し、適切に治療を行うことで下肢切断を回避することができた。
【講演】
『一歩踏み込んだ糖尿病治療のトピックス
〜DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬を中心に〜』
岡山医療センター 糖尿病・代謝内科 梶谷 展生 先生
近年増加し続けている糖尿病について、健康な人と変わらないQOLや寿命の維持・確保を常に目標として治療することが重要である。糖尿病の合併症はQOLに大きく影響を落とすものであるが、UKPDS80の合併症リスク低下を見てみると、早期の厳格な血糖コントロールは細小血管障害のみならず、心筋梗塞、脳卒中といった動脈硬化を伴う合併症、最終的には死亡の抑制に繋がっている。これらは治療開始をしてから20年程度経って現れるLegacy Effect(遺産効果)である。
また、厳格な血糖コントロールを目指す際ためには、多種多様な治療薬を、病態に応じて選択することがポイントになってくる。
■DPP-4阻害薬
まず、2型糖尿病患者では、GLP-1に対するインスリン分泌反応が低下しており、レセプターの感受性低下やインクレチン分泌低下が病態を悪化させていると考えられている。
次に、アジア人は欧米人と比較し、インクレチン薬への反応性が良いのだが、インクレチン薬へのノンレスポンダーも一部存在している。検討段階ではあるが、肥満と脂肪肝が要素と考えられており、血清CD26(DPP-4)が多いと常用量のDPP-4阻害薬では阻害しきれなくなるというデータが存在している。血清CD26の分泌が多い症例とは、高度肥満患者や脂肪肝患者であった。
なお、現在ではインスリンとDPP-4阻害薬併用が可能となり、BOTを実施することで血糖コントロールを良好に維持することも可能となってきた。
そこで、前任施設での外来通院インスリン使用患者のDPP-4阻害薬使用状況を調査することで、より病態に応じた治療を検討したものを紹介する。
DPP-4製剤の種類やインスリンの種類による大きな効果の差は認められなかったが、治療開始時のHbA1cが高い症例ほどよく下がっている。インスリン使用量でも明確な相関はなかったが、インスリン使用量の多い患者はHbA1c高値例や肥満症例が多い傾向だった。ただ、インスリン使用量如何に関わらず、DPP-4阻害薬追加でも下がっている症例も存在していた。HbA1c変化量とBMI、γ‐GTPの関連を見ても、肝障害や肥満の影響は見られなかった。もしかすると、DPP-4阻害薬だけを飲んでいる症例と、インスリンを併用している症例のちがいかもしれない。
兵庫医大のデータでも、インスリンとDPP-4阻害薬の併用で血糖コントロール改善しており、HbA1c高値例で、より改善していることも共通するデータと考えている。
■SGLT2阻害薬
SGLTの役割とSGLT2阻害薬について解説。SGLT2阻害薬間にSGLT2とSGLT1の阻害率や半減期に差があるので、今後の使い分けが出てくる可能性はあるが、DPP阻害薬間ほどの差は出ないのではないかと考える。薬剤の特徴としては、単独でHbA1cは0.6‐1.2%低下(リバウンド少ない)、単独では低血糖リスクは少ないが、腎障害患者では効果減弱する。併用時の低血糖、多尿や脱水、尿路感染症などには注意する(糖尿病学会からのRecommendationを参照)。
○自験例紹介
40代肥満症例:インスリン、DPP-4阻害薬、ビグアナイド併用で治療するがHbA1c9.1%。本症例にSGLT2阻害薬を追加すると、早期に尿糖発現、体重減少、空腹時血糖低下が見られた。
50歳代高度肥満症例(BMI 39.5):コントロール良好だったが急激な悪化がみられ教育入院。インスリン少量からの治療を開始。しかし改善が見られず、インスリンによる体重増加も抑制したい目的があったため、インスリン量増加ではなくSGLT2阻害薬を追加。やはり早期に尿糖発現、空腹時血糖下降が見られた。
いずれの症例も日中、夜間問わず尿糖は出ていた。CGMで見ると24時間にわたり良好な血糖コントロールに繋がっている。ただ、血糖値を全体として下げることで食後過血糖のピークも低くするものの、急激な血糖上昇には対応できない。そこはDPP-4阻害薬の追加などで対応するのが良いと考える。
■まとめ
・インスリン治療下で血糖管理不十分例においては、DPP-4阻害薬の併用は効果的かつ安全な次の一手になりうる。
・SGLT2阻害薬は、投与早期に血糖低下する可能性があり、脱水や低血糖を来たしにくい症例の選択と、投与初期の慎重な経過観察を行えば有効な薬剤になりうる。
・多剤内服で血糖管理困難例については、CGMなど入院してこそわかることもあり、地域連携で糖尿病合併症の長期管理に貢献してゆきたい。
※今回より、当日の内容をビデオ撮影し、ライブラリーとして残しております。
ビデオをご覧になりたい方は、御津医師会事務局までご連絡ください。
投稿日時: 2014年09月24日 (1188 ヒット)