第18回御津医師会糖尿病勉強会
日 時 平成26年7月18日(金) 19:30〜21:00
場 所 岡山医療センター 西病棟8階 研修室4
共 催 武田薬品工業(株)、御津医師会
参 加
(御津)駒越、塚本、大橋、難波晃、森脇、鳥越、清藤、 事務局:岡田
(吉備)井上
【症例提示】
「抗菌薬投与と血行再建により救肢し得た糖尿病性足壊疽の一例」
岡山医療センター 糖尿病代謝内科 森本栄作 先生
左下肢痛を主訴とし、近医より下腿切断を勧められて当院受診した症例。
糖尿病性足壊疽としては神戸分類を用いて評価。Type?と分類した。抹消神経障害と抹消血管障害の有無を評価し、適切に治療を行うことで下肢切断を回避することができた。
【講演】
『一歩踏み込んだ糖尿病治療のトピックス
〜DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬を中心に〜』
岡山医療センター 糖尿病・代謝内科 梶谷 展生 先生
近年増加し続けている糖尿病について、健康な人と変わらないQOLや寿命の維持・確保を常に目標として治療することが重要である。糖尿病の合併症はQOLに大きく影響を落とすものであるが、UKPDS80の合併症リスク低下を見てみると、早期の厳格な血糖コントロールは細小血管障害のみならず、心筋梗塞、脳卒中といった動脈硬化を伴う合併症、最終的には死亡の抑制に繋がっている。これらは治療開始をしてから20年程度経って現れるLegacy Effect(遺産効果)である。
また、厳格な血糖コントロールを目指す際ためには、多種多様な治療薬を、病態に応じて選択することがポイントになってくる。
■DPP-4阻害薬
まず、2型糖尿病患者では、GLP-1に対するインスリン分泌反応が低下しており、レセプターの感受性低下やインクレチン分泌低下が病態を悪化させていると考えられている。
次に、アジア人は欧米人と比較し、インクレチン薬への反応性が良いのだが、インクレチン薬へのノンレスポンダーも一部存在している。検討段階ではあるが、肥満と脂肪肝が要素と考えられており、血清CD26(DPP-4)が多いと常用量のDPP-4阻害薬では阻害しきれなくなるというデータが存在している。血清CD26の分泌が多い症例とは、高度肥満患者や脂肪肝患者であった。
なお、現在ではインスリンとDPP-4阻害薬併用が可能となり、BOTを実施することで血糖コントロールを良好に維持することも可能となってきた。
そこで、前任施設での外来通院インスリン使用患者のDPP-4阻害薬使用状況を調査することで、より病態に応じた治療を検討したものを紹介する。
DPP-4製剤の種類やインスリンの種類による大きな効果の差は認められなかったが、治療開始時のHbA1cが高い症例ほどよく下がっている。インスリン使用量でも明確な相関はなかったが、インスリン使用量の多い患者はHbA1c高値例や肥満症例が多い傾向だった。ただ、インスリン使用量如何に関わらず、DPP-4阻害薬追加でも下がっている症例も存在していた。HbA1c変化量とBMI、γ‐GTPの関連を見ても、肝障害や肥満の影響は見られなかった。もしかすると、DPP-4阻害薬だけを飲んでいる症例と、インスリンを併用している症例のちがいかもしれない。
兵庫医大のデータでも、インスリンとDPP-4阻害薬の併用で血糖コントロール改善しており、HbA1c高値例で、より改善していることも共通するデータと考えている。
■SGLT2阻害薬
SGLTの役割とSGLT2阻害薬について解説。SGLT2阻害薬間にSGLT2とSGLT1の阻害率や半減期に差があるので、今後の使い分けが出てくる可能性はあるが、DPP阻害薬間ほどの差は出ないのではないかと考える。薬剤の特徴としては、単独でHbA1cは0.6‐1.2%低下(リバウンド少ない)、単独では低血糖リスクは少ないが、腎障害患者では効果減弱する。併用時の低血糖、多尿や脱水、尿路感染症などには注意する(糖尿病学会からのRecommendationを参照)。
○自験例紹介
40代肥満症例:インスリン、DPP-4阻害薬、ビグアナイド併用で治療するがHbA1c9.1%。本症例にSGLT2阻害薬を追加すると、早期に尿糖発現、体重減少、空腹時血糖低下が見られた。
50歳代高度肥満症例(BMI 39.5):コントロール良好だったが急激な悪化がみられ教育入院。インスリン少量からの治療を開始。しかし改善が見られず、インスリンによる体重増加も抑制したい目的があったため、インスリン量増加ではなくSGLT2阻害薬を追加。やはり早期に尿糖発現、空腹時血糖下降が見られた。
いずれの症例も日中、夜間問わず尿糖は出ていた。CGMで見ると24時間にわたり良好な血糖コントロールに繋がっている。ただ、血糖値を全体として下げることで食後過血糖のピークも低くするものの、急激な血糖上昇には対応できない。そこはDPP-4阻害薬の追加などで対応するのが良いと考える。
■まとめ
・インスリン治療下で血糖管理不十分例においては、DPP-4阻害薬の併用は効果的かつ安全な次の一手になりうる。
・SGLT2阻害薬は、投与早期に血糖低下する可能性があり、脱水や低血糖を来たしにくい症例の選択と、投与初期の慎重な経過観察を行えば有効な薬剤になりうる。
・多剤内服で血糖管理困難例については、CGMなど入院してこそわかることもあり、地域連携で糖尿病合併症の長期管理に貢献してゆきたい。
※今回より、当日の内容をビデオ撮影し、ライブラリーとして残しております。
ビデオをご覧になりたい方は、御津医師会事務局までご連絡ください。
投稿日時: 2014年09月24日 (1188 ヒット)