2009年11月 巻頭言
御津医師会会長 菅波 茂
10月21日の理事会で御津医師会として「生活困窮者無料低額診療プログラム」を前向きに検討することが決定した。昨年9月のリーマンショックに端を発した世界不況に巻き込まれた日本経済の状況は予断を許さない。企業収支の改善傾向は人件費の削減といっても過言ではない。ますますの失業者の増大が懸念される。保険証の無い人たちや医療費の払えない人たちの疾病治療をどうするのか。従来、生活困窮者を患者として10%以上を受け入れている医療機関は申請により提供した医療費の補填がされる制度がある。最低の社会セイフティネットは保障されているが、その医療機関の数は少ない。2010年以後、経済不況が厳しくなる社会状況には不安が残る。
個々の開業医が生活困窮者にどのように対応できるのか。持ち出しか、診療拒否である。診療拒否ができる開業医は稀である。残された方法は持ち出ししかない。個々の開業医に社会的責務を任せるのは最悪の選択肢である。
個々の開業医を会員として統括する御津地区医師会としてその任を果たすのが最良と考えたい。ただし、御津医師会地域内の生活困窮者が必ずしも会員の医療機関を受診するとは限らない。会員の医療機関を受診する生活困窮者が本当に生活困窮者とは判断できない。誰が御津医師会地域内の生活困窮者の実状を把握しているのか。それは町内会をはじめとする地域諸団体である。
幸いにして、御津医師会は夜間診療輪番制度の実施において連合町内会を1年半に及ぶパートナーとしてきた実績がある。新型インフルエンザ対策でもパートナーとしての連携をしている。町内会は町内の住民の生活に関する相互扶助組織である。生活困窮者を支援するのも大切な業務である。医師会の社会的責務は地域住民の命を守ることである。
地域住民の生活を守る町内会と地域住民の命を守る医師会との連携が「保険証をもてない生活困窮者」の支援に新たな社会セイフティネットとして役立つことを期待したい。
投稿日時: 2009-11-04 15:21:58 (1406 ヒット)