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2015年8月 巻頭言

                                  御津医師会副会長 大守規敬 
 5月から浅学非才の未熟者でありながら、副会長に就任させて頂きました。重責に不安を抱きつつも、皆様のご指導ご協力をいただきながら、微力ではありますが、駒越会長の下、医師会・医師会員、更には地域医療のために少しでもお役にたてればと考えています。しかしながら、今私は理事を6年間もさせていただきながら、如何に医師会活動自体に知識が乏しく、地域医療、ケア、在宅等のことも勉強不足であったか痛感し、急ぎ勉強させて頂いているところです。何卒よろしくお願い致します。 
 このごろの雑感です。比較的最近、作家であり、医師でもあった渡辺淳一さんがお亡くなりになられました。ニュースを聞いていて思い出したことがあります。この方の作品は学生時代から割とよく読んだほうだと思います。そのひとつに、“白夜”というシリーズがあります。これはこの方の後半に多かった情愛をテーマにしたものではなく、自伝的な小説です。記憶に残っているのは、このなかで解剖学実習のときに作者が感じた、“人間の体とは斯くも同じで、斯くも異なるものか”という一節です。これは、発生学的に同じ行程を辿ることへの驚きとそのバリエーションの多さへの驚きを表したものですが、皆様もこのようなことを感じたことは多少ともあるのではないでしょうか。私も、解剖学にとどまらず、その後の臨床の場で、手術で腹腔・胸腔内を見たとき、麻酔で何十何百にひとつのことがあったとき、人によって効く薬と効かない薬があったときなど、何度もこの一節を思い起こします。
 今、医療は国の指導の下、画一的医療が求められてきているようにも感じます。DPCの拡大、病院機能の固定、パスの強化、ガイドラインの遵守などなどです。いずれも医療をスムーズに効率よく推進してゆくために大切なことだと思います。確かに人体の構造、反応の同一性は医療を行う上での大前提ではあります。これがないと医学・医療自体成り立ちません。
 しかし、人や病気にはそれぞれ経てきた経過があり、患者には個々の背景、さらにはこれから先、終焉に至るまでのさまざまな選択があります。医療にせよ、介護にせよ、人の数だけあるバリエーションもまた無視できないものではないでしょうか。以前より、高齢者の増加に伴い、年齢差医療、または性差医療が唱えられてきました。さらに言えば個差の医療も必要なのではないでしょうか。患者ひとりひとりに対しフレキシブルかつ細やかな対応が、かかりつけ医たる私達開業医の役割と考えています。言うは容易く実践は難しいことだと思います。日々、悩み反省もしながら診療にあたっているところです。

投稿日時: 2014-07-31 11:22:53 (840 ヒット)


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