2020年7月巻頭言
巻頭言
「新型コロナ禍に思う」
あしもりクリニック 吉田 英紀
戦後75年間日本人は平和憲法のもとに戦争をすることもなく経済発展を遂げ、平和呆けともいえる生活を享受してきました。しかし人類の歴史を振り返ってみると、それはまさに戦争と疫病との戦いであったと言っても過言ではないと思われます。戦争であればお互いの当事国が武力行使を止めることで災禍は限定的なもので済ませることは可能でしたが(もちろん核戦争が生じれば話は別ですが)、感染症は目に見えないウイルスとの戦いであり、ある意味では戦争よりも始末が悪い手ごわい課題です。古くは古代エジプトのミイラにも天然痘の痕跡が認められる様に古代から人間はこの厄介な疫病に悩まされ続けてきております。つい百年程前にも数千万人の死者を出したスペイン風邪の災禍を経験し、近年もSARS、MARS、新型インフルエンザウイルスによる感染症などの攻撃にさらされ、何とかそれを乗り越えて来ました。
今回の新型コロナの感染症は、交通・経済・社会のグローバル化により過去に経験したことのない災害が全世界に広がっております。幸い日本では、衛生観念が高い国民性や国民保険制度や医療技術の高さなどにより何とか第一波は抑え込みつつあるように思えますが、まだまだ油断は出来ないと思われます。今回のコロナ禍で恐らく大部分の人は、今まで当たり前であった日常生活の価値を再評価したことでしょうし、感染症が一瞬にして生活の基盤を壊してしまう怖さを痛感したことだと思います。今までなかったような新しいウイルスによる感染症の発現の原因として、人間による自然破壊の関与が取り上げられています。自然環境の破壊により野生動物が人間の生活圏に接触し彼らの持っているウイルスが変異して人間に感染してきている可能性が言われております。ウイルス感染症のみでなく大洪水や森林火災、オゾン層の破壊など今まで人間が経験したことのない災害がこの百年程の間に目まぐるしく発生してきております。この新型コロナ感染症の災禍で苦しんだ私達は今こそ本気で地球環境を守るために考え方や行動を改めていくことが急務ではないかと思われます。自国ファースト、大国のエゴを押し通すのではなく、全ての人がこの地球という星に住む地球人としてお互いが我欲を満たすのではなく、国同士が国境を越えて助け合い手を取り合ってこの難局を乗り切っていく必要があると思いますし、もしそれが出来なければ私達人類の未来は無いものと思います。皆で手を携えてこの難局を乗り切っていく事を切に願って止みません。
投稿日時: 2020-07-08 11:25:28 (349 ヒット)