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2010年2月 巻頭言

                                                    御津医師会会長 菅波 茂
1月28日の朝刊で「軽症患者の救急外来受診、特別料徴収を断念。中医協が決定」の記事が載っていた。患者ら支払い委員側の反対理由は「患者自身が(軽症か)判断できないことが多い」とか「逆に、お金を払えば(救急)に行っても良いとなりかねない」などであった。「地域医療崩壊」に瀕している現実の実態からは考えられない認識である。極楽トンボ的発想である。
「地域医療崩壊」の基本的問題は2つある。
1つ目は医師の供給と偏在である。医師の供給と偏在の問題はシステム全体の不備に由来することが多い。短期的には救急外来における勤務医の過激な負担を如何に減らすかである。支払い委員側の理由は患者のわがままを放置し、「医療崩壊」を加速させるだけの無責任発言である。何故なら、わがままとわかっている患者が多いのが現実である。
2つ目はお金である。「人にしてもらって当然は無い」という常識である。救急外来維持には多額の経費が必要。そのお金とは税金と社会保険料である。納税者による「相互扶助」システム維持からみれば、通常サービスを超えれば超過料金支払いが常識である。日常診療と救急診療にはシステム維持の経費に大きな開きがある。利用者(患者)に対する最大の教育とは、疾病教育だけでなく、お金に対する認識を持たせることである。その象徴が特別徴収料金である。
特別料金徴収の本当の意義は第一次診療と第三次診療の区分を明確に利用者(患者)に認識させることである。これは医療供給サイドも本気で実行する必要がある。本気とは双方に覚悟が求められる。第三次診療実施医療機関にとっては短期的に収入が減少する。第一次診療実施機関にとっては夜間診療対応が求められる。「地域医療崩壊」を防ぎたければ先ずは覚悟である。医療サイドの覚悟があってこそ、利用者(患者)サイドの覚悟を要求できる。
覚悟の原点は医師免許の精神にしか求められない。「人の命を助けろ、救え、見放すな」である。地域医療システムの原点は医師会にしか求められない。「医師の生存権の保障と地域住民の命を守る」である。第三次診療実施医療機関特別料金徴収に対応可能な、御津医師会の「夜間診療輪番制」は来る3月には開始後1年半になる。御津医師会会員の尽力に感謝するとともに、良きモデルとして普及することを期待したい。

投稿日時: 2010-02-02 11:43:20 (1383 ヒット)


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