2012年5月 巻頭言
御津医師会副会長 駒越 春樹
最近の新聞記事に、職場健診でメタボリックシンドロームに関係する、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病などの異常が50%以上の労働者に認められる状態が5年続いていること、そして岡山県ではその割合がさらに多いことが報じられていました。私たちは、働くことで暮らしの糧を得、家族を支え、社会を発展させてきました。しかし、働くなかで身体や心の健康を損ねる場合があります。企業の活動を支えるのは人であり、労働者が心身ともに健康であって初めてその活動が維持発展できます。この重要な、働く人の健康を確保することが産業医の使命だと思います。
今御津医師会の会員で5名の方が産業医として活動しておられます。ほとんどのかたは、20年程前に、認定医、専門医が話題になりだした頃、産業医の資格を得られたのだと思います。その後新しく資格を取られた方の話を聞きませんから、この場を借りて産業医についてご紹介してみたいと思います。日本医師会の認定産業医に認定され登録されるには、50単位以上の基礎研修を受講することが求められます。少し負担になるかと思いますが、その気になればたいしたことはありません。是非産業医に挑戦してみてください。登録されると、有効期限は5年間です。認定後の5年間で、生涯研修として20単位の受講が必要です。
それでは具体的に産業医の仕事がどのようなものか、私のことで恐縮ですが実際の活動を少しお示しします。基本的には月1回の職場巡視と、それを踏まえた、労働安全衛生委員会に参加します。職場巡視では、職場の環境、労働の様子を五感をもって感じることが大切です。日常の生活で使用する製品に遭遇することもあり、その出来上がる様をつぶさに見ることができることもあります。医療の世界ではなかなか導入しにくい、効率的な機械化されたモノづくりの様子も見ることができます。また、職場により年1〜2回健康診断が実施されます。その結果をみて、個別に事後指導をします。ばあいにより問題点を中心に健康講話をすることもあります。
私たちの日常の診療は、多くの場合1対1の関係で行われています。産業医の仕事では、数十人以上の方を対象としますので、日常の診療とはまた違った醍醐味を味わうことができます。また産業医活動に必要な知識が、逆に普段の診療の助けになることもしばしば経験するところです。さらに自院の整理整頓、安全管理に参考にすべきところを、見せてもらうこともしばあります。会員の皆様、産業医として活躍してみられませんか。
投稿日時: 2012-04-28 15:02:55 (704 ヒット)