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2016年8月巻頭言

                                                                     御津医師会理事 鳥越 昇一郎
 
 ここ20年余りの間に、阪神・淡路、東日本、熊本と日本列島は激震に襲われました。熊本では多くの人がテント生活を強いられ、未だ復旧の道筋が見えない状況にあります。
 さて御津医師会の所属する地域では、活断層は疎であり、直下型地震の発生する可能性は高くないと想定されていますが、駿河湾から四国沖まで延びる南海トラフに地震が発生した場合には、その影響は避けられないと思われます。トラフ沿いの巨大地震は90〜150年おきに発生しており、前回は1944年の東南海地震のあと1946年に南海地震が起こり、前々回は同じ場所が32時間の時間差で活動しています。名古屋沖の東南海、四国沖の南海の順に発生しており、このことは今後の対策にも参考になると京都大学の鎌田先生も指摘されています。その時期について、地震学者たちは西暦2030年代には起こると予測しています。九州から関東までの広い範囲に震度6〜7の揺れをもたらし、人口密度の高い地域性により、被害は深刻なものとなります。今までの局地的な震災では必ず非被災地からの救援の手が差し伸べられましたが、南海トラフではその可能性は低いでしょう。
 そこで震災発生時の地域医療が課題となります。しかし医療従事者も被災者となります。東日本では、小規模診療所の建物の崩壊に伴い高度中核病院に患者が集中し、スタッフは不眠不休で対応されました。震災直後は外傷等の救命・救急が中心でしょうが、時間の経過につれ、平素慢性疾患で治療を受けている患者さんの医療需要が増してきます。宮城県医師会の八嶋先生は「今回の震災が発生するまでは災害訓練で一般の医師が関わることといえば、医師会で会員を組織して傷病者の治療にあたるというのが訓練の一端であった。だが実際に大規模災害が起きた今回、一番大事であったのはできるだけ早く日常の診療を切れ目なく行っていけるかということにつきるのではないかと思えた。日常的な医療がいかに大事かということである。」と述べておられます。
 自らが不安だと災害時の医療活動はおぼつかなくなります。先ずは家族や親しい人たちとの連絡手段を確保し、そして“かかりつけ医”機能の早期再開に尽力すると共に、介護事業所、訪問看護ステーションとの連携強化が更に求められます。

投稿日時: 2016-07-29 14:04:58 (752 ヒット)


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