2012年11月 巻頭言
御津医師会理事 大守規敬
朝夕寒くなって来、昼間との寒暖の差が激しくなってきました。会員の皆様にはこれからの季節、お身体に気を付け診療にお当たり下さい。
さて、私の様な若輩者にこのような巻頭言という身に余る機会をお与ええ下さりありがとうございます。僭越ながらと‥‥
医学部入学から丁度三十年経ちますが、そのころからよく人から訊かれていたことに、「あなたはなぜ医者になろうと思ったの?」「どんな理由で医学の道を目指したのか?」ということがありました。皆様にも経験がおありでしょうか。 若いなりに思うことや、青臭いながらも理想・理念があったと思いますが、その頃の自分は事細かに話してゆくのが面倒にも感じられ、いえ、そういったことを声高に話すのが恥ずかしくも感じられていたのでしょう。よく使っていた返答は、「祖父が医者でしたので」と、一言で、木で鼻を括ったようなものにしていました。それ以上の議論に発展しないようにの目論見があります。
実際母方の祖父は戦前・戦中、総社の田舎のほうで小さな“村医者”の様な開業医をしておりました。しかし、母が十歳のときに他界していますので当然私は会ったこともなく、ましてや影響など受けたはずもありません。僅かに母や親類縁者に当時の様子や人となりを聞くばかりでした。
このごろになってのことです。自分も開業医としてやってきて、祖父の医院はどんな医院だったのかな、どんなことを考え、どんな医療をしようとしていたのかな、などと思いを馳せることがあります。もちろん当時と社会情勢、医療情勢は隔絶としているでしょうが、そういった開業医の原点のような考えを聞いてみたいような気がします。今の私・私たちの参考や反省、さらに将来のために役立つかもしれないなと。
また、話を戻して、自分の若き日の医師・医学を志していた思いや考えていた事、時には悩んでいた事にも、もう一度目を向けてみるのも同じく大事なことかなと考えています。忘れかけていた真摯なヒポクラテス精神や献身的なボランティア的心はたまた医学探求の熱意まで、少しでも戻ってくるかな。
幸いにして、私達の医師会には大先輩も居られますし、立場の違う勤務医の先生も居られます。またいつかみんなでこんな原点のような話を「いまさら」「いまだからこそ」してみたいな、なんて思っています。
投稿日時: 2012-11-01 16:21:42 (881 ヒット)