2025年5月 巻頭言
巻頭言
ひとりじゃない
御津医師会理事
塚本啓子
私は物語が好きだ。ハッピーエンドが好きだ。映画でも小説でも、ぐっとくるフレーズの歌詞でも。
前回巻頭言を書かせていただいてから、今日までの間で、当院(医療法人塚本内科医院 津賀クリニック)、当院本院の在る吉備中央町では大きな事件が2つ起きた。PFAS汚染水問題と、デジタル田園健康特区だ。それぞれの詳細をここで書くつもりはない。しかし、それらに触れずに巻頭言を書くわけにもいかない。私が巻頭言として読みたい文章は、愚痴や悲観的なものではない。そこで、これらの事件を通じて、私、妹、父の力になってくださった先生方への感謝の言葉に代えさせていただきたいと思う。
患者さんに寄り添う医師でありたい。共感の心を持って接するようにしたい。そういったことは、当たり前にもっているべき資質と思って医師として働いてきたけれども、顔を合わせるたびに「応援しているよ」と声をかけてくださったこと、そっと肩をたたいてくださったこと、まるで自分のことのように真剣に多方面に一緒に掛け合ってくださったこと、すべてのことが、本当に私たち姉妹の力になり勇気になった。ひとりじゃないんだ。どうしたらよいのか、誰に相談したらよいのか、これからどうなるのか、右も左もわからなくて途方にくれることさえできなかったあの時、そう感じることができたことが一番心強かった。寄り添うってこういうことなんだ。ひとりじゃないと思えることって、こんなに力になるんだ。本当に身をもって経験することができた。
御津医師会の先生方、岡山県医師会の先生方、吉備中央町健康影響対策委員会の先生方、妹と父の母校である川崎医科大学の先生方、岡山大学旧第三内科の先生方、ほかにも私たちを気にしてくださったすべての方々、私たち姉妹の初動時に力になってくださったこと、本当にありがとうございます。心から感謝しています。
数々の名作といわれる映画や小説や歌の中でも、恋人や友人や家族など、具体的な関係性は違えど「ひとりじゃない」ということを主題としている作品は多いと思う。それだけ、生きていく上で、ひとりじゃないと感じられることは、大きいのだと思う。
医師として一人でできることは限られているのでチーム医療が重要であることは普段の生活の中でも実感できていたけれど、そうではなく、「寄り添うこと」が持つ真の力をみた。ひとの優しさはどれだけ沁みるものか。個人では太刀打ちできないような問題に直面したとき、信頼できる組織があることは大きいと感じた。「頼れること」で足元が支えられた。
現実の世界では何も終わっていないし、終わりがくる事件でもない。けれども、いただいた応援を勇気にしてハッピーエンドに向かって進んでいきたい。真のWell-beingを追求していきたい。
投稿日時: 2025-05-01 11:32:30 (14 ヒット)