トップ  >  巻頭言  >  17代会長 駒越春樹先生  >  --2014年度  >  2015年10月 巻頭言

2015年10月 巻頭言

                                    御津医師会理事 難波経豊 
 本年5月に御津医師会理事に選任いただきました。理事のなかで最年少の若輩ではありますが、御津医師会を微力ながら支えて参りたいと存じます。
 私事ではありますが、平成24年4月に岡山市北区御津金川で内科医院を継承いたしました。それまでは循環器内科を中心とした内科診療と、心房細動を主なテーマとした不整脈研究に従事して参りました。開業後は一般内科の外来診療に加えて、在宅医療という新たな分野に身を投じてきました。そのなかで抱いた雑感を少し記してみたいと思います。
 現在、高齢者医療に対する行政の方針は「病院療養は急性期の短期間、それ以外は在宅医療」です。この方針について、医療、介護、行政、患者、家族など、視点が変われば評価は様々だと思います。しかし、高齢者数、医療従事者数、病院ベッド数、医療費、混合診療などの現状が続く限り、この方針でなければ医療は回らなくなります。御津医師会では一貫して在宅医療を推進する活動を行っています。
 在宅医療を行うにあたり、無くてはならないものが介護環境です。在宅医療を受けている方の多くは生活機能も低下していますので、介護による生活介助も同時に必要となります。在宅療養は医療と介護の両者が揃って成り立つものと感じます。
 では、患者様やその家族にとって在宅療養の入口はどこでしょう? 在宅医療の相談窓口は医療機関ですが、普段の生活のなかで介護の相談窓口は見えません。地域包括支援センターがその任を負いますが、数も少なくあまり周知されていません。このような現状を考えると、介護の相談も含めて在宅療養の入口は医療機関が担うべきではないかと感じています。本年6月には医療介護総合推進法(略称)が成立し、団塊世代が後期高齢者となる2025年問題や将来の人口減社会を見据えて、行政としても医療と介護が一体となった仕組みの構築が始まります。医療機関がより密接に介護に関わる時代の流れを感じます。
 在宅療養には、地域に総合病院の機能を構築した環境が理想的です。いわゆる地域包括ケアです。自宅が病室、かかりつけ医が主治医、各医院が診療科、訪問看護が看護師、訪問リハビリがセラピスト、ケアマネがMSWとなり、訪問介護や通所介護などの介助を受けながら生活します。医師は多職種と連携しながら病気を含めた生活全般に関わることになりそうです。私が継承開業した当時、これからはなんでも診るのだから専門は捨てた方がよいと助言を受けたことがありました。これには一理ありますが、視点を変えると各先生方の専門は地域包括ケアのなかで診々連携という形で活きると思います。
 僭越ながら私の雑感を記してみました。診療科や地域が違えば事情も異なりますし、どのような事にも様々な意見があると思います。ともすれば行政の方針に右ならえになりがちですが、郡市医師会の活動は会員の先生方や地域住民の方々の思いを取り入れた草の根の活動であるべきと考えます。御津医師会では、より地域に密着した活動の場として「御津ネット」「津高一宮ネット」といった医師会地区をさらに区分した枠組みを設け、医療や介護の従事者から地域住民まで交えた活動も始めています。会員の先生方におかれましては今後ともご意見ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

投稿日時: 2014-10-01 12:33:07 (884 ヒット)

印刷用ページ このニュースを友達に送る

これまでの巻頭言




TOPへ

サイトマップ