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2016年9月巻頭言

                  御津医師会理事 大森 浩介 
 
 平成7年に開業して21年余り、振り返ってみると地域の特性もあり患者さんの高齢化は顕著に進んだし、医療内容も大きく変わった。調べたわけではないが、今の患者さんの平均年齢もおそらく80才くらいの印象で、90才以上の方も毎日数人診療する。開業当時は90才台の患者さんは本当に稀で、2〜3人程度であったが、今では数十人で待合室には大抵1人くらいはおられる。認知症がなければ、歳をとることは皆うれしくないので、「70代は前期高齢者、80代は中期高齢者、90代は後期高齢者」と勝手に分類・説明して、何かと嘆きがちな高齢の患者さんを慰めるようにしている。それでも90代ともなると、どうやって元気づけたらよいか困るが通院可能な方は実際にお元気な方なので、「まだ90代前半とか、同窓会をしたら一番元気かもしれん」などと力づける。90代後半ともなると、耳が遠い方も多くなり、こちらも大声が必要で世間話するのも一苦労である。
 余談だが、漫画サザエさんのおじいちゃん「磯野波平」の設定年齢は54才というから、ちょっと驚いた(私よりも若い!)。そういえば、まだ会社勤めをしていた(昭和の頃の定年は55才?)し、カツオとワカメは孫ではなく、子でしたね。
高齢化に伴ってか、医療面でも延命治療や自然死、自宅での看取りなどの終末期に関する議論が盛んだ。高齢になると病気と老化の境界が不鮮明になってくる。たとえば脳梗塞や心筋梗塞は動脈硬化という老化現象が原因だし、認知症も病気なのか老化なのかはっきり区別することは難しい。年齢とともにリニアに増える病気の多くは、老化が原因だから完全に克服するのは不可能なのである(生活習慣の改善や薬である程度予防や改善はできるが)。病気も寿命の一部と考えて死ぬことを受け入れるケースも必要であろう。年齢や疾患で一概には言えないが、「死ぬことが敗北」と日本人は考える傾向がある。しかし、人生の終着駅は必ず「死」であって、それを避けることはできない。地球上全体を見たとき、テロや戦争、犯罪で死ぬことを思えば、たとえ不運な病気でもベッドの上で最後が迎えられることはある意味平和と言えよう。このような内容の議論を進めていくと問題が複雑深淵過ぎて、簡単には結論に至らないからこの辺で切り上げよう。
医者になりたての頃からしばらくは、「がん患者」には病名を告知しないのが医療の常識であったし、病院で心肺停止になると年齢や病状にかかわらず原則心臓マッサージなどをしていた。それがいつの間にかご存知の通りの変わりようである。同じように終末期医療もおそらく10年先には現状とは変わっているだろう。
 

投稿日時: 2016-08-30 15:16:09 (779 ヒット)


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