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2018年2月巻頭言

 巻 頭 言

 
失明原因−光を失わないために
 
       御津医師会監事 熊代 修
 
 昭和から平成に変わった時のことを昨日のことの如く覚えていますが、その平成も幕を閉じようとしています。時代は移り変わるとともに、医療技術もまた変革と向上の歩みを続けています。
ここでは、眼科医療について失明原因という観点から少し紹介させて頂きます。
人間の生存にとって視覚は五感のうち最も重要な感覚であり、視覚を失うことがその人にどれだけの苦しみを与えるかは言うまでもありません。
現在、日本における失明原因を多い順に挙げれば、第1位緑内障、第2位糖尿病網膜症、第3位網膜色素変性症、第4位黄斑変性症となります。
第1位の緑内障の有病率は、40歳以上で5%ですが、年齢とともに上昇し、70歳以上では10人に一人以上の有病率となっております。
目は左右2つあり、片眼に視野狭窄があっても気が付かないこともよくあるため、30%位視野欠損が生じた状態になって初めて眼科を受診するという人も時々おられます。
他の科と同様、適時の健康診断の必要性を痛感させられます。
緑内障を診断するには、眼圧検査、眼底検査、視野検査、画像検査(OCT)を行います。OCTとはOptical  Coherence Tomographyの頭文字をとった略語で、日本語では光干渉断層計と訳されます。これにより網膜の断面をみることができ緑内障の早期診断ができるのです。
超高齢化社会を迎え、特に女性は90歳以上普通に生きる時代になりましたが、それだけに視覚に障害を抱えて生きていく人も多くなります。早期に発見して適切な治療を受けて進行をできるだけ抑えて可能な限り快適な生活を送って頂きたいと願っております。
 第2位の糖尿病網膜症についてですが、これは内科等で糖尿病の全身管理を徹底して頂くことに尽き、眼科には定期的に受診すればよいと思います。
 第3位の網膜色素変性症ですが、これは遺伝的な病気で、現在でも治療法は確立しておりません。遺伝子治療やIPS細胞を使った研究もされているようですが、実用化はまだ先の話です。この疾患は難病に指定されております。
 第4位の黄斑変性症は、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害を生じ、見ようとするところが見えにくくなる病気です。50歳以上の約1%に見られ、高齢になるほど多くなります。欧米では、失明原因の第1位はこの黄斑変性症です。
診断は緑内障のところで述べたOCTでできます。
治療法としては、最近では、抗VEGF剤の硝子体注射が盛んに行われております。
VEGFとはVascular Endothelial Growth Factor(血管内皮増殖因子)の略ですが、脈絡膜新生血管の発生にはこのVEGFが関係していると考えられており、VEGFを阻害することにより脈絡膜新生血管を退縮させる治療法です。目の中(硝子体腔)に6週あるいは4週ごとに注射します。
 また、白内障は目のポピュラーな病気であり、80歳以上の人には程度の差こそあれ、100%の人に認められます。日本では、白内障手術が年間140万件前後施行されており、白内障で失明する人は日本ではほとんどいません。  もっとも、世界全体では、白内障が失明原因の51%を占めており第1位となっております。第2位は緑内障で8%、第3位は加齢黄斑変性で5%、第4位は角膜混濁4%、第5位トラコーマ3%です(2010年WHO)。世界的に見れば医療水準が低く、衛生状態が悪い地域が多いことを物語っているのではないかと考えます。
 以上、失明原因と治療法を簡単に紹介しましたが、皆がいつまでも視力を維持して快適な生活が送れるよう眼科医として一層の尽力をしていきたいと思っております。
 

投稿日時: 2018-01-31 12:11:37 (760 ヒット)


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