2023年11月 巻頭言

巻頭言

 

回復期リハビリ病院の憂鬱


御津医師会理事  難波 洋一郎


 小生の勤務する済生会吉備病院は回復期リハビリ病床40、地域包括ケア病床35、人工透析13床のこぢんまりとした病院で、人口約4万5千人の備中高松・足守・中山地区にある唯一の病院である。西は総社市、南は倉敷市に接する周辺地域であり御多分にもれず高齢化率も岡山市の平均を上回る30%以上である。年間新入院患者数は両病床併せて500名前後で「地域に親しまれ信頼される病院」を目指して職員一同頑張っているところである。 回復期リハビリテーション入院料1、地域包括ケア病棟入院料1を取得しているが、それぞれ看護職員はもちろんのことリハビリスタッフ、薬剤師、栄養士、看護補助者に至るまで人員配置が設定されており、患者重症度割合、在宅復帰率、入院日数にもいろいろ制限がかけられている。最新の治療で経済的効果を上げる種類の病院ではないので、急性期から在宅復帰へのお手伝いをさせていただくことを粛々と行うことが我々の使命だと思っている。
 急性期病院で脳卒中救急患者を受け入れていた時は「紹介患者は断るな」を大原則としていた。もちろん患者からみれば当たり前のことであるが、病院側からみると一度断るとなかなか次に紹介してもらえないよということでもある。慢性期病院でも全く同じで、患者にとって重症度は関係なく無事に入院生活が過ごせてADLが上がるのが一番である。急性期病院から最終落ち着き先までのcoordinator役になればという思いで極力重症患者受け入れに努力しているつもりなのだが、退院に際して厄介なことがある。退院後の重症患者の居場所がなかなか決まらないのである。以前何かにも書いたのだが、介護福祉施設は「レビン」「吸引」「インスリン(特に夕、眠前)」と言う三種の神器ならぬ三種の禁忌がある。患者の高齢化は今しばらく続く。重症高齢者の受け皿となる介護医療院や療養型病床数の適正化、そして介護福祉施設のマンパワーを含めた機能拡充が望まれるが、現在の日本の人手不足を考えると期待薄か。
 退院が滞るもう一つの原因が昨今の薬剤費の高騰である。各種抗がん剤をはじめ心不全治療薬、骨粗鬆症治療薬等の薬価の高い薬を処方されている患者が多くなってきており、薬剤費を自己負担しなければならない老健施設などには受け入れ不可とされるケースが多くなっている。薬剤処方は医師の専権事項であり、高齢者への多剤処方は安易に行われるべきものではないが、必要な薬は使うしかないと思う。最近米国で承認された新規アルツハイマー病治療薬aducanumab、lequanemabはどちらも年間数万ドルかかるらしいが、日本ではどうなることやら。

 初めて仰せつかった巻頭言で徒然なるままに愚痴っぽいことを書いてしまいましたが、季節はちょうど食欲と芸術の秋、皆さまコロナとインフルに負けず楽しく仕事をいたしましょう。

投稿日時: 2023-11-09 14:42:14 (122 ヒット)


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