2024年11月 巻頭言

投稿日時 2024-11-07 12:10:26 | カテゴリ: 20代会長 難波経豊先生

巻頭言

 

御津医師会監事  
山下 浩一

 

1978年(S53年)私が医師になった頃、子宮頸癌の患者発生数は1年間で約33,000人余りでした。(子宮癌3.5万人の96%)年間約1万人が死亡していたと覚えています。
当時欧米では子宮癌の65%は体癌で頸癌はその半分位でした。
2023年(R5年)日本の子宮頸癌約1万人、子宮体癌約1.7万人と昔の欧米と同じくらいの比率となりました。頸癌死亡は約2700人です。
子宮頸癌の発生原因がウイルス感染症だという論文が出てきたのは1983年(S58年)です。
当時抄読会で訳したのを記憶しています。癌化率が高いのが16型・18型をはじめ13〜15種。次に高いグループを25種挙げていました。良性のパピローマ(乳頭腫)やコンジローム(尖圭種)のグループもありました。その後研究が進み、2008年にはノーベル賞を受賞しました。
2010年ごろから世界中で子宮頸癌をワクチンで予防する運動が始まりました。
日本と同じ12〜16歳接種がスウェーデン、16歳以下接種がデンマーク、英では12〜13歳接種がそれに相当し2020年になり発生率が平均87%減少しました。(88〜86%)
英の論文では16〜18歳接種したグループでも34%減少しています。
これは性交の有無による差だと思われます。日本でもワクチン接種を2011年ごろからスタートしており、初めのころは70%くらいの女子が受けていました。
2013年に正式に開始して3ヵ月目に推奨しないと発表されました。
ワクチン副作用の可能性を指摘されましたが、身体の筋肉が痛む線維筋痛症様症状を訴える方は接種後半年〜3年ぐらいで発症している例も多かったようです。(通常副作用は接種4週間以内発症です。)
私が子供のころ(S30年代)にも反ワクチンの方々がいて同様の例を出していたのを記憶しています。日本ではその後のワクチン非接種の時代が長くありました。因みに筋肉様症状等の副作用の発生率はワクチン接種群と非接種群に全く差がない為、ワクチンとは無関係と結論付けられています。
2010年ワクチン開始時は2価ワクチン(HPV16・18)でしたが、その後4価ワクチン(HPV6・11・16・18)が使用可能になりました。HPV6・11は癌化率が低いのですが良性腫瘍(コンジローム・パピローム)の原因になります。R5年からは9価ワクチン(HPV6・11・16・18+31・33・45・52・58)が公費で使用できるようになりました。進行頸癌ではHPV16が62.2%、HPV18は22.6%が原因ですが、HPV31・33・45・52・58全部で9.4%くらいの原因です。2価ワクチン(HPV16・18)では84.8%のワクチンで発生率87%減でした。
9価ワクチンでは93.6%原因ですので発生率はさらに低下する事が期待できると思います。9価ワクチンの良いところは初回接種が15歳未満の場合は6ヵ月後の2回接種だけで良いところです。2価、4価ワクチンは必ず3回接種でしたので早く開始なさる方には良い話だと思います。
 






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