巻頭言
御津医師会理事 鳥越 昇一郎
立秋とは名ばかりの暑い日が続いています。
小林製薬の紅麹サプリメントの健康被害問題がニュースに登場して、数か月経過しました。厚生労働省は7月、摂取後に死亡したとして同社が因果関係を調査している人数が97人になったと公表し、健康食品の与えるリスクに注目が集まっています。「サプリメントは安全で気楽に摂取できるもの」ではなくなりました。
サプリメント(栄養補助食品)とは何でしょう。「健康に良いとされる成分を添加している加工品」を健康食品とし、そのうち「カプセルや錠剤・顆粒のような形状をしているもの」をサプリメントといっています。このようにサプリメントは食品であるため、医薬品ほど厳しい審査を経て世に出るわけではなく、その副作用や危険性の記載が十分ではありません。しかし、日本ではマスコミやインターネットにその広告があふれ、数千万人の人が利用しています。サプリメントを求める人が後を絶たない理由の1つに、「おなか一杯食べても痩せる」「飲むだけで疲れが吹き飛ぶ」といった魅力的な宣伝文句にあるのかもしれません。そこには生活習慣を見直して規則正しい生活を実践するよりも、安易に手に入るサプリメントを選択する傾向があるのでしょう。
「血中のコレステロール値を正常に保つ」という謳い文句のもとに販売されている紅麹サプリメントの摂取が原因と疑われる健康被害は、2014年にヨーロッパで報告されています。その危険性から、フランスは摂取前に医師に相談するように注意喚起しており、スイスでは紅麹を成分とする製品は、食品としても薬品としても売買は禁止されています。
日本腎臓学会は、「紅麹コレステヘルプ」を摂取して腎障害のみられた患者を調査したところ、摂取中止後でも85%以上の人で腎機能が回復していないという中間報告をしています。薬剤性の肝機能障害も約1割はサプリメントが原因とされています。
さまざまなサプリメントの新商品が作られていますが、副作用的な面の検証を疎かにしてはならないと思われます。
通院されている方に腎障害の進行がみられ、伺ってみるとあるサプリメントの長年の服用歴がありました。中止をお願いしてもなかなか聞き入れてもらえません。サプリメント教信者のような方が時におられますが、皆様はいかようにお付き合いされておられますでしょうか。
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