巻頭言
『災い転じて・・・・のど元過ぎれば医食同源!?』
国立病院機構岡山市立金川病院 大森信彦
令和4年は、公私とも(?)に、やっかいな『災い』の多い年であった。英国の故エリザベス女王陛下張りに言えば、"Annus horribilis”といったところか。何とか夢中で切り抜けてここまで来たけれど、ふと気がつけば還暦!なんてこった!自分では、老眼と慢性腰痛と多少の物忘れ以外は若さ充溢と過信していたのだが。。。
本年災いの最右翼は、何といっても、新型コロナ罹患。あしかけ2週間も籠城戦を余儀なくされたことだ。職場では、立場上、「くれぐれも感染に注意して!いかがわしいところには絶対行かないことっ!!」などと、口酸っぱく皆に猛烈なプレッシャーをかけてきたのに、なんと、よりによって、自分が、院内最初に生物兵器テロに倒れるとは!!ノブレスオブリージなんて陶酔している場合ではない!こういう時もなぜか女性はめっぽう強い!カミさんは感染を免れ早々にホテルに退避。恥ずかしさと高熱としつこい上気道症状の波状攻撃との孤軍奮闘が始まった。保健所からの非常食糧配給も、「他の人に回してください」なんて、カッコつけて断ってしまった手前、武士は食わねど…とやせ我慢するわけにもいかない。何といっても、敵は悪名高きCOVID19である。冷蔵庫の備蓄食料を食いつなぎ、令和のインパール作戦(?)を敢行することにした。この歳まで『男子厨房に入るべからず』の掟を忠実に守って(?)料理などした記憶もない私。頼みの綱は、YouTubeの家庭向け料理番組だ。検索してみると、出てくるわ出てくるわ・・・おいしそうな家庭料理、ちょっと気取ったイタリアンなどなど…これは僕にもできそうだ!なんだかワクワク楽しくなってきたぞ!!コロナになるのも悪くないな、などと不謹慎な考えも頭をもたげる・・・よしやってみようと、思い切って厨房に立ってはみたものの、調理器具や調味料のありかがわからない。まずは、厨房の断捨離を決行した(後からカミさんにえらく怒られた。。。泣)。これがまた意外と熱中でき喉の痛みも忘れるほど。さあ何から行こうかな?どうせ冷蔵庫の食材は、隔離期間が過ぎたらすべて処分の憂き目にあうのだから、食材を使いきれるようなレシピをたくさん探さねば食材が気の毒。A4ノートに、作れそうなレシピを、大学院時代の実験ノートのような感じで、適当なイラスト入りで書き取っていく。これがまた推理小説を読むときのように無心になれることを発見!そんなこんなで、気が付けば2冊分のノートが出来上がり、調理開始。最初は、案の定、包丁で指を切ったけれど、徐々に知恵がついていく自分にYDK(やればできる子)と自己満足!隔離が解除されたらこんな調理器具買いたいな、などと妄想はエスカレートするばかり!作ってはタッパーに分注して冷蔵保存。毎日三食きっちり食べて、たいして痩せることもなく、対コロナ戦から生還した。そして、作戦計画通り、冷蔵庫は空になった!イヤーッ、楽しかったあ〜(笑)
すっかり元気になった今、料理は私の密かな趣味の一つに加わった。家内に試食してもらって、合格が出る打率は一割五分くらいで散々だけれど、仕事帰り、スーパーに立ち寄って、面白い食材はないかな、カミさんを驚かせるにはどうしようと眺めて歩くのはとてもリフレッシング。カミさんの日ごろの大変さや、手抜き具合(笑)も理解できたしな。まさに医食同源!料理するという行為は、どうやら家庭の健康にとても良いようだ。きっと来年はレシピ本出版で、Annus mirabilisとなるかしら!?!?!・・・どうやら、コロナの後遺症が脳に回ったようだ。まあいいか。これからも、自己満足の「主夫業」をサイドビジネスにして、楽しい還暦生活を楽しもう。妄想ばかりでなく、仕事も頑張らんとね(笑)!!!
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