巻頭言
芳賀佐山診療所 清藤哲司
当院が昭和63年に開院した際、父は51歳でした。そして私は満50歳となりました。平成20年5月、突然の後継となりましたが、御津医師会会員の先生方のご指導のおかげで、今日まで診療を続けてこられました。
最近はインターネットで情報収集することが多くなりました。虚偽情報もありますが、マスメディアの伝えない情報がいかに多いかと、日々感じています。そんな中、息抜きとして観たYouTube動画で、「50代からの人生を最高にするたった一つの大切な思考」というのがありました。
高齢者雇用安定法の改正(2021年4月)により、70歳までの就業機会の確保が努力義務化された一方で、大手企業を中心に、コストの高い中高年社員の人件費を削減する動きがあります。人事コンサルト会社の調査によると、早期退職の対象となりやすい50代の特徴として、新しいことを学ぶのを忌避する傾向があることが挙げられています。
では、50代以降に成長し、必要とされる人となるにはどうすればよいか。スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドウェックの研究によると、固定されたマインドセットと成長するマインドセットという2つの思考態度があり、後者の考え方を身につけることが重要だといいます。
固定された思考態度の人は、自分をよく見せようとする傾向があり、そのために嘘をつく場合すらあります。また他者を自分との比較の対象として見る傾向があります。「マウントをとる」という言葉が最近よく聞かれますが、これは格闘技由来といわれています。SNSで、「『飲食店の店員さんへの態度』こそが、まさにその人の性格です」という投稿がありました。他者にマウントをとりたがるのは、固定された思考態度の人といえるでしょう。
成長する思考態度の人は、自分を賢く見せることよりも、自分がより賢くなることに人生の目標をおいています。
先般、不幸にも安倍晋三元総理が凶弾に斃れられましたが、安倍氏と親交のあった作家・百田尚樹氏は、安倍さんは誰に対しても同じ態度で接してくれたと語っています。一方で、安倍氏は大変な読書家であったそうです。稀代の教育者であった森信三氏は、「一切の悩みは比較より生じる」と言いました。自分の成長を目標に生きている人は、困難に屈することなく、他人からよく学ぶことができます。
厚労省の2020年末時点の調査で、診療所の医師の平均年齢は60.2歳で、年齢別にみると、60歳以上が51.4%を占めています(2022年3月24日、読売新聞)。この中で私はまだ若輩者ですが、これからも地域の皆様に必要とされるために、成長する思考態度をとり続けたいと考えています。
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