2020年8月巻頭言

投稿日時 2020-07-30 14:08:35 | カテゴリ: 19代会長 中山堅吾先生

                 巻頭言


                      芳賀佐山診療所  清藤 哲司

 去る7月15日の理事会において、初めて6名の先生方がリモートで参加されました。私自身、リモート会議に立ち会ったのは初めてでしたが、思いのほか、画像や音声は明瞭で、あたかも目の前にいるようにやりとりをされていました。今後このような機会がますます増加するものと思われます。
 コロナ禍の副産物として、テレワークの便利さが広く知られるようになりました。文明の発展とともに、人は新たな時間を得るようになりました。電化製品の普及により家事の時間が短縮し、交通機関の発達により移動時間が短縮、さらにテレワークにより移動の必要すらなくなりました。テレワークで浮いた時間は、他のことに振り向けられます。人間の幸福は、いかに時間を支配するにかかっている。このことは、作家の百田尚樹氏が、週刊新潮の連載(「新相対性理論」全32回、すでに終了)で述べていました。
 「禍福は糾(あざな)える縄の如し」「人間万事塞翁が馬」
いわゆるトランポノミクスによる史上空前の好景気に沸くアメリカ合衆国、2020東京オリンピックに期待がふくらむ我が国。これらに冷や水を浴びせたのが、この度のコロナ禍でした。さらに九州を中心とした地域では度重なる豪雨災害にもみまわれ、多くの人々が困難に直面しています。
 忙中有閑。苦中有楽。死中有活。壺中有天。意中有人。腹中有書。(百朝集)
 これは、昭和の政財界の指導者たちに多大な影響を与えた、陽明学者の安岡正篤先生が座右銘としていた「六中観」です。「私は平生窃(ひそ)かに此の観をなして、如何なる場合も決して絶望したり、仕事に負けたり、屈託したり、精神的空虚に陥らないやうに心がけてゐる。」災害には幸運にもあわずにすむ人がいます。病気にも一生かからない人がいます。しかし、どんなに(他人から見て)平坦にみえる人生でも、必ず浮き沈みはあるものです。誰でも避けられないのは、身近な人の死でしょう。国立がん研究センター名誉総長の垣添忠生先生は、年上の妻を亡くした悲しみから、希望を失わず立ち直った経験を語られています(「致知」2020年7月号、他著書多数)。
 周辺国にも様々な不安定要素があり、我が国は引き続き、内外の困難な状況に向き合わなければなりません。そんな中、私たちひとりひとりは、「一隅を照らす」(伝教大師最澄)の心で、今・ここ(リモートも可!)でできることを、心を込めて行うことで、希望はみえてくるのではないでしょうか。
 






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