2019年5月巻頭言

投稿日時 2019-04-25 15:11:19 | カテゴリ: 19代会長 中山堅吾先生

 巻頭言

 
津島知靖
 
 平成31年3月末日をもって,岡山医療センターを定年退職しました。引き続き4月以降も,木曜日の泌尿器科外来を担当していますので,お困りの症例がございましたら,ご紹介頂ければと存じます。
 さて,時代は「平成」から「令和」に変わります。「令和」の典拠は「万葉集」の巻五,梅花(うめのはな)の歌三十二首の序文で,初めて漢籍ではなく日本の古典から選定されました。典拠はともかくとして,令和時代の医療はどのようになっていくのでしょうか。医療のみならず,すべての社会活動における日本での大きな流れは,「少子・高齢化社会」と,すでに始まっている「人口減少」でしょう。そのため,中山間地域では医院の後継者不足が問題となっており,過疎地域での医療過疎が加速するのではないかと懸念されます。
 改正労働基準法が本年4月1日から施行されています。この中で、有給休暇を年5日以上取得させることが事業者の義務となりました。この義務に違反すると,有給5日を取得していない労働者1人あたり最大30万円の罰金が科せられる可能性があります。対象は常勤,非常勤を問わず,年10日以上の有給休暇が付与される労働者です。「有給休暇管理簿」を作成し,適正に有給休暇を管理しなければなりません。法律上の有給休暇に含まれない夏期休暇などは有給であっても,カウントされません。そのため,国立病院機構では有給の「夏期休暇」3日の名称を「リフレッシュ休暇」に変更して,法律上の有給休暇として扱うことにしました。ただし,従来の有給20日に夏期休暇の3日を含めて,有給が23日あるところを,合計20日にすることは労働者の不利益になるので,従来の20日とは別に3日間の有給を設定し,消化しなかった場合には次年度に繰り越すことが出来るようにしています。また,5日にカウントされる有給の最小単位が半日になります。午前中2時間といった有給の取り方もありますが,全体の時間にはカウントされますが,罰則規定の5日間にはカウントされません。
 また,勤務医についても労働の上限時間数が検討されています。10年以上前であれば,1日24時間,1年365日病院に滞在して患者を診る医師が良い医師とされてきました。しかし,現在は, 36協定で決められた時間外労働時間を遵守するように労働基準局から求められており,病院側は労務管理に苦労しています。今後は,勤務時間外での他院での当直の応援なども勤務時間に含めるような方向で議論されているようです。
 働き方改革は,医療過疎地域の病院への非常勤医師派遣を阻害し,救急医療の提供などに悪影響を及ぼす要因の一つになりかねません。医療現場を知らない人々の議論で,方向性が決められていくことは非常に危うく,現場の医師が機会を捉えて声を上げていかなければなりません。
 





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