御津医師会副会長 塚本眞言
高齢者の定義が変わるようです。小生は「前期高齢者」から「准高齢者」になりそうです。そのうち高齢者は100歳以上となる日も来るのでしょうか。高齢者は何歳からかを議論するより、今後はフレイル(健常と要介護状態との中間的な段階)について取り組むことが重要と考えます。すなわち、加齢に伴い筋力などの身体の機能や生理的な機能が低下して、心身ともに活力が低下する状態を適宜評価して要介護状態にならぬようにすることです。どの機能が低下しているのか、社会的、身体的、精神心理的な要因を分析し、危険因子を取り除いた生活をするよう心がけることです。サルコペニア(筋肉減少症)は転倒、ADLの低下など身体的フレイルの重要な一因といえるでしょう。
「老化」は生き物すべてが避けることが出来ない自然現象で、あの織田信長も「死のうは一定」の小唄を愛唱したと言われています。また、その時代は人生50年と言われていたようで、「人間五十年。下天のうちを比ぶれば・・・」も信長の有名な言葉ですが、現在では日本人の健康寿命は74.9歳(2015年)で世界1位になっています。
人間は最善の環境が整えば自己管理だけきちんと実践することにより、120歳まで生きることが出来るそうです。(日本シティジャーナル)
また、抗加齢医学においては、精神的な励み(希望)や、前向きな思考形成(プラス思考)が、老化時計を遅らせるために重要な役割を果たしていると言われています。実際に小院に通院されているNさん(93歳、男性)は、妻(88歳、脊髄小脳変性症)のために畑で野菜を作り、毎日料理をして食べさせることが生きがいのようで、最近益々、活き活きとされているのを見ると納得させられるものがあります。
さて、今までは健康寿命を延ばす取り組みとして、受診率の伸び悩みがあったものの基本健康診査などの生活習慣予防(メタボ対策)に重点を置いた施策が行われ、それなりの成果はあったと思いますが、今後は特に超高齢化の進んだ中山間地では「地域包括ケア」すなわち、自助、互助、共助、公助の根幹にかかわる地域ぐるみの健康推進運動に向けてもフレイル対策(栄養と運動)を意識した生活習慣を身に付けるよう指導していくことが最重要課題となるでしょう。
とはいえ、小生の診療地域には2025年までには限界集落から消滅集落になりかねない地区も含まれていて、待ったなしの状態です。
地域の皆さんと共に住み慣れた地域で安心して最期を迎えられるように、微力ながら地域の介護力の強化の旗振り役にならねばならないと考える今日この頃です。
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