2013年9月 巻頭言

                                 御津医師会理事   川島 邦裕

 毎日うんざりするような暑さが続いておりますが、会員の先生方にはいかがお過ごしでしょうか?今年はまさに千年猛暑と呼ぶにふさわしい酷暑で、熱中症で搬送される方も例年より多く、また今年の大人も含めての手足口病の爆発的な流行は、このような急激な気候の変動に体が順応せずに免疫力が低下したことも一つの要因ともいわれています。
 先日恩師の先生の某病院長就任祝賀会に出席いたしました。この席での祝辞の中で、どんなかたちでもいいから、これは先生が作り上げたものとの足跡を残してくださいという一言が心に残りました。この病院は肺がんだけみても年間の手術症例が300例を超えるぐらいの日本でもトップクラスのがんの拠点病院です。病院の全体の方向性、地域社会への貢献、そして患者さんへの心の行き届いた医療の質の向上など、病院長としての仕事はまさに激務であることはいうまでもなく、どの来賓の先生方もそれを充分承知のはずですが、それ以上にその一つ先まで目指してやってほしいという先生への厳しく、そして期待を込めた激励のメッセージでした。
 「個の力」という言葉が、サッカー日本代表の本田選手がコンフェデ杯の前の会見で発言して以来注目されています。日本は組織力はあって当たり前であり、個の力を高めないと更なる上を望むことはできないとの発言でした。結果、日本代表はこの大会で3連敗をきたし、また先日のウルグアイとの親善試合でも2-4での完敗に終わりました。現時点ではサッカーでは日本は個の力も含めて、世界の強豪とはまだ少し差があるようです。
 さて、私たちには何ができるでしょうか。私たち開業医はほとんどが個人で仕事(診療)をしています。少し前の朝日新聞の難病を患った方々の特集記事で、難病ゆえに何年も診断がつかずいろんな病院を転々とし、想像を絶する苦労と苦痛を余儀なくされた体験が綴られていました。たとえそれが非常にまれな疾患であったとしても、あるいは実はありふれた疾患であったとしても、私たちの医師の日々の勉強と、ちょっとした集中力で、この症状はひょっとしてあの疾患かも?と疑うだけで、そこから一気に展望が開いていく可能性があります。サッカーでの個の力の意味合いと私たちの診療とは全く別物です。ただ、私たち一人一人のできることの積み重ねが地域の人々への貢献になり、そしてそれはまたやりがいとなって自分に帰ってくるものだと考えます。
 最後にわれらがファジアーノについて一言。いつ見ても一生懸命やっていて手を抜かず、汚いファウルをせず、非常に好感のもてるチームです。ただ8月4日のガンバ大阪戦では遠藤選手や宇佐美選手の個人技(個の力)の前に残念ながら屈してしまいました。今回J1に届かなかったとしてもくじけず、さらに切磋琢磨してもらいたいと期待しています。

投稿日時: 2013-08-30 13:24:25 (821 ヒット)


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