2018年9月巻頭言

投稿日時 2018-08-31 14:17:53 | カテゴリ: 19代会長 中山堅吾先生

 巻 頭 言

 
  御津医師会理事 坪井 雅弘 
 
 此の度御津医師会理事に任命されました済生会吉備病院の坪井です。宜しくお願い致します。
最近、労働者の過労死や過労による自殺などが社会問題化して、長時間労働の是正について色々な改善案が議論されています。医療従事者も例外ではありません。平成23年6月の厚生労働省(以下、厚労省)の「看護師等の雇用の質の向上に関する省内PT」の報告書で、看護業務改善に向けて労務管理体制を確立することを求められました。その後、医療従事者の働き方・勤務環境の改善についての施策が厚労省より報告され、今国会で「働き方改革」関連法案が成立しました。医師は今まで労働基準法の対象外の体制で働いていましたが、平成17年の研修医の過労死裁判での最高裁判所判決で「医師は労働者である。」と認定されて以後、医師は一般労働者と同じように労働基準法に基づいた同一労働時間、特に時間外労働時間の規制の対象になったのです。
 平成24年総務省が全国の正規職員の職業別の1週間の労働時間の統計を出した時に、60時間以上の労働時間分布に医師が突出して多かったことで、医師の働き方を是正する必要性が議論となりました。平成28年末に厚労省が行った10万人調査では、週
60時間以上働いている勤務医は38%で、診療所医師は0.9%でした。この結果、平成29年6月の労働政策審議会で、時間外労働月45時間、年360時間、特例として年720時間という大枠が決まりました。しかし医師はこの労働規制の対象ではありますが、医師法に基づく「応召義務」などの特殊性がある事で、5年後にもう一度修正を加えてから規制を適応することとなりました。
 働き方改革で、時間外労働時間の上限規制により、医師の労働時間が短縮されれば、色々な影響が出てきますが、大きな影響は二次救急をしている中小病院の「救急医療」ではないかと思います。また外来診療にも影響が及びます。そのことにより病院機能が低下して、地域住民の診療に影響が出ることになります。医療従事者を増やせば病院経営が圧迫されるでしょう。
 しかし、勤務医の安全と健康を確保する事は、良質な医療を提供する上で非常に重要なことです。厚労省と四病協・日病協等との協議で労働時間の短縮や規制の在り方などについて検討していただき地域医療を支えるような方策が出ることを期待しています。
 





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