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2019年7月巻頭言

 巻 頭 言

 
     御津医師会理事 菅原 正憲 
 
 締め切りの3日前、医師会から「今月の巻頭言をお願いします。」とTELあり。全く不意の出来事(私が勝手に順番を忘れていたのか?)で少し慌てました。今の世情で話題になっている事は何だろう? アメリカと中国の貿易摩擦、次世代通信技術の覇権争いでファーウエイをアメリカが排除しようとしている。中国からの輸入品に追加関税を課すとした政府に対し、アップルは中国産のiPhonの輸入について「追加関税対象除外」の申請をした。アップルの製品に売り上げの6割を依存していた日本の液晶大手ジャパンディスプレイも新たに開設した石川県の工場の生産自粛に追い込まれた。さらにはイランとの対立。アメリカの無人偵察機の撃墜に反応して出したイラン攻撃の命令をトランプは実行の10分前に中止した。しかし日本のイランからの原油輸入は総輸入量のたかが5.5%だが、ホルムズ海峡の緊張で原油価格の高騰をきたしたら日本の経済はどうなるのか、消費税は予定通り10%になるのか?などなど…。
 いろいろ思いを巡らせていたら、最近出席した勉強会で興味ある話題を思い出しました。
 一つはrTMS(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation )
 昭和大学発達障害医療研究所、神奈川県立精神医療センターの中村元昭先生
 TMSコイルを装備したヘッドギアを頭に装着し、瞬間的に高電流を流すと変動地場が誘導される(ファラデーの電磁誘導)、その変動地場が脳の局所に渦電流を誘発し、脳の特定の部位の細胞を興奮させるらしい。これがうつ病治療の保険適応になったという話。電気や電磁波による治療はすでに、統合失調症のtDCS(transcranial direct current stimulation)や、脳梗塞による麻痺に対して大脳皮質電気刺激療法などがあるらしい。脳の電気刺激というと、ナチスドイツのマインドコントロール計画を思い浮かべる。特殊な光線や電磁波を照射して兵士を洗脳して特殊部隊を作ろうとしたものだ。「電気刺激」治療は、むかし「調子の悪い電化製品を“叩いてみる”という一見原始的な理論の様にも思える。「頭を叩いて刺激する」のと同じようで、電気刺激で認知症が治ったり、あたまが良くなったりする日が来るのか楽しみもある。雷に打たれた人は性格や人格が変わるのだろうか?
 もう一つの話題は、腸内細菌叢の話。
 生まれた赤ちゃんが、いわゆる正常な腸内細菌叢を獲得するには、経膣分娩で産道を通過する際、母親の膣や皮膚の常在菌を嚥下することが重要らしい。帝王切開と経膣分娩の子供では、生まれて3歳頃までの腸内細菌叢のパターンに大きな違いが見られるが成人になるに従ってその差がなくなってくるらしい。ところが、この3歳頃までの乳幼児期の腸内細菌叢のパターンが特に重要らしく、たとえばアトピー性皮膚炎、川崎病、自閉症スペクトラム、ネフローゼ、大腸癌、自己免疫疾患…は帝王切開で生まれた子供に多いとのこと。まだこれらの所見は「観察医学」の知見が多いが、ある種の細菌群が免疫防御機構に関する遺伝子の調節に関わっているとの所見も確認されている。帝王切開で生まれた子供の口の周りを、母親の膣の拭い液のついたガーゼで拭く事によって腸内細菌叢が改善するらしいが、成人の腸内細菌叢を変えることは容易ではない。便移植という方法もあるがまだ一般的ではない。最近健康食品として人気のヨーグルトといえば、以前島根医大の家森先生が日本に紹介しブームになった「カスピ海ヨーグルト」が思い出される。今も乳業メーカーを中心に様々なタイプの製品が開発されているも、腸内細菌叢を変えるようなものは見当たらない。腸内細菌の同定は、昔の培養による手法から新型シークエンサーによる遺伝子解析に変わり、毎年1000種以上の菌が新たに同定されている。腸内細菌叢は今、様々な疾患の病因として注目され研究のトピックスになっている分野です。将来腸内細菌叢を介した全く新たな病気の治療法が確立される可能性もあり興味ある分野です。
 以上、とりとめのない話になりました。
 

投稿日時: 2019-07-02 10:10:58 (43 ヒット)

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